まぐ太の金融と経営の扉

金融や経営に関することを書いていきます

良いマネージャーとは? Googleの最適解「プロジェクトoxygen」に学ぶ


マネージャーの仕事とはどういうものなのでしょうか。

最近、社内で私の昇格人事が検討されているとの話を聞きました。仮に昇格ということになれば、現在のプレーヤー的なポジションからマネージャーのポジションへと変更となります。

今までも役職が変更になったことはありましたが、プレーヤーという大きな枠組みの中での変更であり、働き方自体が変わるという経験は今回が初めてです。

仕事の内容については今までの上司を見ているとなんとなくイメージはつきますが、実際に組織を束ねパフォーマンスを出すことに手法というか考え方とはどのようにすればいいかという部分が曖昧なままです。社内研修もあるということですが、いまいち期待できないというのが本音です…。

そんなことを考えていると、あのGoogleが「良いマネージャーとは、どういう人か?」ということを調査したプロジェクトがあることを思い出しました。その名も「プロジェクトOxygen」。

Googleといえば巨大企業ですが、創業は1998年です。わずか四半世紀で社会のインフラ的なサービスを提供し、人々の生活に欠かせない企業となっています。社員数も10万人超と、世界中に社員を抱えて、様々な組織が混在しています。一気に巨大企業への階段を駆け上がってきた背景には人事面などでも、従業員のパフォーマンスを発揮させたり、組織をうまく持続させていくための、相当な工夫がされていたのではないかと思います。

私が勤める会社とは、社風や一人ひとりの能力はもちろん大きく異なりますが、参考にしてみようと思いました。

プロジェクトOxygenとは?

Googleが2009年に実施した社員を対象とした大規模調査を指します。このプロジェクトでは「優秀なマネージャーとはどういう人物か?」ということを、Googleの社員向けに調査しました。

調査内容は人事効果やフィードバックサーベイ、表彰、その他のリポートなどから、マネージャーに関する1万件に及ぶデータを収集し、仮説と検証を重ねたものです。

 

Googleの答え

優れたマネージャーの行動規範

  1. 良いコーチである
  2. チームにまかせ、マイクロマネジメントはしない
  3. チームの仕事面の成果だけでなく健康を含めた充足に配慮し、インクルーシブ(包括的)なチーム環境をつくる
  4. 生産性が高く、結果を重視する
  5. 効果的なコミュニケーションをする(人の話をよく聞き、情報を共有をする)
  6. キャリア開発をサポートし、パフォーマンスについて話し合う
  7. 明確なビジョンや戦略を持ち、チームと共有する
  8. チームにアドバイスできる専門知識がある
  9. 部門の枠を超えてコラボレーションを行う
  10. 決断力がある

Google re:workより引用

以上がGoogleが導き出した「優れたマネージャーの行動規範」です。しかし「この行動規範がすべての企業に当てはまるとは限らない」ともしています。大切なのは「企業で働く従業員がパフォーマンスを発揮させるためには、どのようなマネージャーが必要だと考えているのか」を特定することです。

確かにこのGoogleの答えが、我社の社風や文化に馴染んでいくかは不透明です。今までこのようなことをする上司はいませんでしたし、聞いたこともない…。ただ「こんな上司がいたらいいな」とも思います。そう思える以上はチャレンジする価値があるかもしれません。まずはやってみて自分なりに試行錯誤を重ね、アレンジしていきたいと思います。

さらにGoogleではこの10個の項目について、掘り下げた研究結果を公開しています。次からは個別項目について見ていきます。

 

行動規範1:良いコーチである

「評価の高いマネージャーは優秀である」ことが求められます。マネージャーが良いコーチとなるには、チームメンバー各々のニーズに焦点を合わせていくことが重要です。そのために必要は手法として以下の項目を上げています。

  • 定期的に1対1ミーティングを行い、チームメンバーの話に耳を傾ける
  • 自分の考え方とチームメンバーの考え方に違いに注意する
  • アクティブ・リスニングを用いて、メンバー自身の洞察を促す
  • 具体的かつタイムリーなフィードバックを行う
  • 意欲を引き出すポジティブなフィードバックと、発展につながるネガティブなフィードバックのバランスをとり、長所と改善点を理解する

GROWモデルによるコーチン

GROWモデルはイギリスで開発された、コーチングのフレームワークです。コーチングのスタイルをメンバーによって柔軟に調整する重要性を強調しています。部下を自発的に考えさせ、行動させるための気付きと学びのサイクルを回していきます。

「Grow」とは下記の4つの頭文字から構成されています。

Goal(目標の明確化):求めるものはなにか

Reality(現状の把握):何が起こっているか

Option(選択肢の検討):何ができるか

Will(意思の確認):何をするか

対象相手に「Grow」を質問を通じて明確に気が付かせることを目的としていて、マネジメントだけでなく、日常的な問題解決のプロセスにも活用できます。

このGROWモデルを用いて、チームメンバーのキャリアについて定期的にディスカッションすることで、チーム全体のパフォーマンスも向上していきます。

Goal:目標の明確化

チームメンバーがキャリア形成の先に見据えているものを特定します。

  • 「1年後、5年後、10年後の自分はどうなっているか?」
  • 「収入や現在のスキルの制約がないとしたら、どのような仕事に着きたいと思うか?」
  • 「興味、価値を置くもの、原動力となっているものは何か?」
Reality:現状の把握

チームメンバーの現在の役割とスキルを理解します。

  • 「現在の業務で最もやりがいを感じること、また、ストレスを感じることは何か?」
  • 「今の仕事はやりがいがあるか?能力を伸ばせているか?どうすればやりがいを感じられるか?やりがいのない業務はなにか?」
  • 自分の長所と短所について、他の人からどのような指摘を受けたことがあるか?」
Option:選択肢の検討

目標と現状のギャップを埋めるための方法を考えます。

  • 「以前話し合った目標達成のためのスキルを磨くために、今できることは何か?」
  • 「自分を伸ばすために、どのような仕事やプロジェクトに挑戦したいか?どのような経験をしたいか?」
Will:意思の確認

現状から目標に向かうための実現可能なステップを特定します。

  • 「何を、いつまでに行うか?」
  • 「役立つリソースは何か?目標達成のために役立つスキルは何か?」

効果的なミーティングの実施

評価の高いマネージャーは頻繁に1対1の個別ミーティングを実施していたようです。面談には相応の時間を要しますが、早い段階で問題を把握し、対応策やフィードバックを行える機会にもなります。

行動規範2:チームに任せ細かく管理しない

効果的なマネージャーは、チームに権限を与え、成長を伸ばすために、下記の4つの行動を取っているようです。

  1. 細かく管理しない
  2. 自由にやらせつつも、必要に応じて助言をする
  3. チームに対する信頼を明確に示す
  4. チームの成果を周囲に伝える

自分がチームのために働いているのであり、チームが自分のために働いているのではないことを、理解している人こそが効果的なマネージャーであると言われています。

適応・状況のアセスメント、コラボレーション

チームメンバーをサポートする際に、深入りしすぎると「細かく管理されている」と感じさせていしまい、緩すぎると失敗に終わります。チームメンバーの成長によってこのバランスは変化していきます。最適なバランスを保つためには、マネージャーとチームメンバーとの話し合いが重要であるとGoogleは考えています。

チームに権限を与え信頼関係を構築する

Googleの調査結果では、評価の高いマネージャーほど、チームに権限を与え細かな管理はしない傾向にあります。Googleでは次のような方法でチームとの信頼関係を構築していくことを勧めています。

  • 意見を求める
  • イデアや知見を求める
  • 肯定的なフィードバックを行い関係を強化する
  • リーダーを育てる
  • 各チームメンバーの能力を伸ばす
  • チームメンバーにコーチングする
  • オープンなコミュニケーションを推奨する
  • チームメンバーへの信頼を示す

上手に任せる

適切なチームメンバーに適切なプロジェクトを任せることは難しい場合もあります。しかし効果的なマネージャーほど権限や責任、意思決定を個人やチームに委ね、仕事を任せる傾向にあるようです。任せる範囲を定め、適切にサポートできるようなポイントとしては下記を挙げています。

  • 目標を見据える(最終目標を達成するにはどうすればいいか、どこを任せられるか)
  • 自身を見つめる(任せられる部分とそうでない部分。自身の得手不得手)
  • 適任者を見出す
  • 委任する
  • 連絡を取り合う(絶えずコミュニケーションをとり確認する)
  • 感謝する

行動規範3:チームの仕事面の成果だけでなく健康を含めた充足に配慮し、インクルーシブ(包括的)なチーム環境をつくる

行動規範6:キャリア開発をサポートし、パフォーマンスについて話し合う

効果的なマネージャーは仕事の面だけでなく、個人的な面においても、メンバーを気にかけていることが明らかになりました。

仕事面ではフィードバックを提供したり、成長する機会を見極めたり、スキル向上に焦点を当てたりしながらチームを作り上げていきます。マネージャーは現在の職務における昇格のみに重点を置くのではなく、同じような影響をもたらす別の機会をも視野に入れるようチームを指導しています。

個人的な面では、マネージャーとしての成功には各チームメンバーのそれぞれの満足感に配慮することが不可欠であるとしています。部下から高く評価されるには、部下への配慮を示し、それを伝える必要があります。

キャリア形成に役立つ話し合いをする

Googleではマネージャーと部下がキャリアについて定期的(4半期に1回など)に話し合うことを推奨しています。その際に次の点について事前に考えておきます。

  • チームメンバーのパフォーマンスと実績
  • メンバーが楽しいと感じる仕事
  • メンバーが得意とする仕事
  • メンバーの現在の仕事
  • 組織がメンバーに求めていること
  • 最も改善するべきエリア
  • キャリア形成に関してメンバーが必要とするサポート
  • 自身の価値を知ってもらうためにできること

GROWモデルを用いた話し合い

キャリアに対するディスカッションについては、先述している「GROWモデル」を用いることで、マネージャーとチームメンバーとの話し合いが円滑になります。

「シンプルな一つの目標」を設定する

従業員の満足度を高めるために「シンプルな1つの目標」を設定しています。チームメンバーがワークライフバランスを保てるような目標を設定し、マネージャーは、各々がその目標を達成できるようサポートします。

共感と思いやりについて理解する

マネージャーがここのチームメンバーに対してそれぞれに対する気遣いを示すことが重要と考えています。そのために相手に対してどのように共感し、思いやりを持てば良いかについて、マネージャーが理解することが大切です。それにはまず、共感と思いやりの違いを知る必要があります。共感とは、「他の人の立場と感情の状態を感じる能力」です。思いやりはもう一歩踏み込んだ感情で、「他の人の不安に共感したうえでそれを和らげたいと思う気持ち」です。

過度な共感は、共感する側にストレスを与えて消耗させる一方、思いやりは気遣い・温かみ・モチベーションとなることがわかっています。

ではマネージャーがどのように思いやりの気持ちを育むかのヒントを次に書いていきます。

  • どのようなサポートが必要かを聞く。求められていることをわかったつもりにならない。
  • チームメンバーとの共通点を探す。
  • チーム内では競うことではなく、協力することを推奨する
  • メンバーに対し、心から関心を持つ
  • 思いやりのある振る舞いを浸透させるために模範を示す。
  • 相手に過度に思い入れることは避け、協会は明確にする

行動規範5:効果的なコミュニケーションをする

行動規範7:明確なビジョンと戦略を持ち、チームと共有する

評価の高いマネージャーの特徴の一つに、ビジョンの設定があります。明確なビジョンを有していることは様々な点で役に立ちます。具体的にはビジョンを有することで、「チームを成功に導くことができる」、「チームメンバーの目指すべき方向性を伝えられる」、「チームがやるべきことを選択する際の判断材料となる」、といった重要な意味を持ちます。

ビジョンを設定し、それを効果的にチームに伝える必要があります。その際は口頭や書面で、明確・簡潔・率直に伝えることがポイントです。

チームとビジョン設定を行う

チームと協力してビジョンを作成するには、どうすればいいのかを考えていきます。

コアバリュー

コアバリューとは、チームの基盤となる信念を意味し、チームのパーパスとミッションとを導き出します。

パーパス

チームの存在理由とチームが組織全体に与える影響です。パーパスが存在しなかった場合にどのような影響があるかを考えます。

ミッション

達成しようとしている目標を表します。

ストラテジー

ミッション達成のために将来にわたって展開する手段を意味し、長期にわたる場合があります。

ゴール

ストラテジーを短期的で達成可能な目標へと落とし込んだものです。チームの取組を一つにまとめる働きがあります。

リフレクティンブ・リスニングを行う

リフレクティング・リスニングでは、相手が表に出した言葉や気持ちを聞き、それを自分の言葉に置き換えて繰り返します。これにより効果的にコミュニケーションが取れるようになります。

ポイントは、「気持ちを受け入れる」、「不明確な点から相手の視点を明確にする」、「受け入れて共感する」です。

フィードバックを行う

マネージャーにとって最も重要で難しいものの一つが、チームメンバーへのフィードバックです。Googleではフィードバックを実施する際に、次の点に考慮しているようです。

  • 質の高いフィードバックを提供する
  • 基準に一貫性を持たせる
  • 思い込みを避ける
  • 自分を正しく理解してもらう

行動規範4:生産性が高く結果を重視する

行動規範8:チームにアドバイスできる専門知識がある

効果的なマネージャーは、チームが具体的な成果を上げられるようにサポートすることを重視しています。マネージャーの重要な役割の1つはチームメンバーに起こりうる障壁を予測し、取り除くようにサポートすることです。

専門スキルを持つマネージャーは、チームメンバーに寄り添い、その力を発揮することで、信頼できるアドバイザーとなります。これにより自らのスキルを向上し続けられると同時に、マネージャーが単なるリーダーではなく、チームのいちメンバーであるという重要なメッセージを伝えることにもなります。

効果的なマネージャーは「自分はチームのために働いている」のであり、その逆では無いことを自覚しています。

結果を重視して、生産性を維持する

効果的なマネージャーがチームの生産性を維持し、結果を出すために行っていることを以下にまとめます。

  • チームに常に結果を重視させる
  • チームによる優先順位をサポートする
  • 障壁を取り除く
  • 誰が何に取り組んでいるかを明確にする
  • 懸命に働き、チームの指針となる

チームと共に働くことで生産性を上げる

マネージャーはチームにとって信頼できるアドバイザーでもあります。その多くが各分野の深い専門知識を備えており、自らの知識を生かしてチームメンバーが創造的な解決策を考え出せるようサポートします。具体的には下記のようなことを行っています。

  • チームの傍らで懸命に働く
  • 問題点を把握する
  • 専門知識とスキルを活かして問題解決をサポートする

チームとともに仕事に取り組むことで、マネージャーは自分の知識をチームに示すことができます。また、自分のスキルアップにも繋がります。そして重要なのは、メンバーの仕事に加わることで、マネージャーが単なるリーダーではなく、チームに参加しているというメッセージを伝えられる点です。マネージャーがチームのために働いている姿を見せ、チームメンバーにその姿を伝えることが大切です。

感想と活かせそうなポイント

ここまでGoogleで重要視されているマネージャーのポイントをまとめてきました。いや〜、これがすべて出来ればスーパーマネージャーになれそうな気がしました。今の私とは次元が違いすぎる…。

前向きに考えれば、その分学ぶべきことや参考にするべきことが多いということですね。マネージャーというポジションになる以上、今までのような個の成績ではなく、チームとしてのパフォーマンスを最大限に発揮できることを心がけるようにします。

ここに書いてあるやり方が、すべての組織に当てはまるわけでは無いので、自分なりに試行錯誤しながら、自分や組織に合ったやり方を作っていきたいと思います。

今回の件を通して、他にもGoogleがどのような取組をしているのか、興味が湧いたので、本なども読んで、こちらでご紹介していければと思いました。

 

より詳しく見てみたい方は、こちらのサイトをご参照ください。

rework.withgoogle.com

『うまくいっている人の考えかた』を読みました。感想と今後活かせそうなポイント!

最近は「自己啓発書」のようなビジネス書はあまり機会が有りませんでしたが、スキマ時間に読書をしようと思い立ったものの、すっと頭に入っていく内容のものでないと、細かな時間で自分なりに理解するのが難しく、「その時間に合う本がないか」とコソコソと考えていました。

そこで出会ったのが、今回ご紹介する『うまくいっている人の考え方』という本です。作者はアメリカの方で、特に自尊心(自分を大切にしようとすること)の研究を行っているとか。

私もなにか問題が起きたときや、うまくいかないときは「自分のせいだ」と自分を責めることが多いです。しかしその自責は「自分の責任だと表面的に反省しているふりをして、その時の反省具合に比べて、その後の改善が弱いな〜」と感じていたのです。本当に必要なのは、「反省した後」であり同じようなミスを、「どう防ぐか」ということでした。そんなきっかけになればな〜と思いこの本を読みました。今回はAmazonKindleにて読みました。

この本を読んだ感想と、自分にとって「これは今後に活かせそう!」と印象に残ったポイントをまとめていきます。

 

この本を選んだ理由

  1. 家庭と仕事に追われ、どちらもうまくいっていない
  2. 自分で自分が嫌になる
  3. 自身のマインドを変えたい

子供が生まれ、今まで通りの働き方では家族にも迷惑がかかる。かといって、仕事の質を落としてまで早く帰ることを優先すると職場に迷惑がかかる。どうしたらいいのか…。と毎日毎日悩んでいました。そんな状況を打破したいと思いこの本を読んでみようと思いました。

この本の結果だからなのか、今では以前よりも早く退社しながら、営業成績は以前と同水準をキープできております。この結果、この本のおかげで、私の生産性が向上した気もします。この本は「こう行動するべき」といったハウツー本ではなく、「物事に対する向き合い方」「マインド」に対するアプローチを行う内容です。私の悩みについても、少なからず「私自身の心の持ちよう」も原因だったのかな、と今も思います。

 

内容を一言で表すと

「自分にもやさしく」

自尊心を研究しているという著者ということもあり、全体的に「うまくいかなくても、必要以上に自分を責める必要はないよ」と優しく寄り添ってくれます。他責よりも自責が強い人のほうがストレスを抱えやすいのかもしれません。

「他人のために頑張りすぎるのではなく、まずは自分を一番大事にしようね」と、全体的にポジティブ思考で、今の頑張っている自分を認めてくれるような印象でした。

 

『うまくいっている人の考え方』ポイント3つ

1.自分のしたいことをする

自分の人生を変えられるのは自分だけです。時間は有限です。その時間をどう使うかは人それぞれ。かといって、「自分勝手に生きる」というわけではありません。自身の人生で重要なこと、大切にしていることに時間を使うべきと感じました。他人の目を気にし過ぎて、自分のやりたいことが他にあることに気がついていながら、他人の求める行動を取ってしまったり、いざ自由な時間ができても、気を抜くとスマホSNSをダラダラと見たりと、楽な方へ流されてしまう怠惰な自分への喝にも感じました。

2.他人の思い通りにならない

他人はわたし達以上にわたし達の人生に興味はないということです。なので、自分を押し殺してまで他人を優先する必要はありません。同じくらい自分の意志や考えを大事にする必要があります。私は他者からの目や評価を気にしてしまうタイプなので、これは意識的に取り組まなければと思いました。ただ、礼儀正しさやさわやかな態度などは心がける必要があります。自分のしたいことを犠牲にして他人を喜ばせる必要はないということです。

3.自分の人生を歩く

1日に30分でも経済や家族のしがらみを無しにして、自分が何をしたいのかを考える時間を作ることが大切だとありました。「人生の目標」や「自分がどうありたいか」を真剣に考えることで、自らの行動の指針となりモチベーションにも繋がります。なんとなく過ぎ去ってしまう日々を振り返るという意味でもいいのかもしれません。

 

その他印象に残った部分

他人に対する悪い感情はさらっと忘れる

私は嫌なことがあっても、自分の中で芽生えた強い憤りを黙殺していることが多いです…。しかしその出来事が起きてからしばらく、その怒りを解消するまでに時間がかかります。それが非常に不毛な時間だということを理解していても、その感情をうまく解消できていない状況に対して、さらにストレスに感じてしまします。このようなマイナスの感情はすぐに忘れ、気持ちを素早く切り替えしたいものです。

感謝・褒め言葉はその場で口にする

恥ずかしながら、なかなか言えていません…。言って悪い気分になりませんし、自分もされたら嬉しいことです。自分がされて嬉しいことは人にも率先して行いたいです。

耳の痛いことを受け入れる
建設的な批判に対して、素直に受け入れましょう。むやみに反発したり相手を批判するように切り替えしてはダメです。よく聞くことですが、それだけ大切なことなのでしょう。しかし「よし、やろう」と思ってすぐに実践できるものでもない気もします。著者は、実践するには「自尊心が大切」とあります。やはり何をするにもまずは自尊心を育てることが大切なようです。

 

感想

「ますは何をするにも自尊心が大切」という印象でした。確かに自分に優しくできないのに、人にやさしくできるはずもないな、と納得する部分もありました。そして仕事ができるイケてるビジネスパーソンは、どこか全体的に余裕を感じることが多いです。その背景にも自尊心が関係しているのかもしれません。

そのほか、断る重要性についても書かれています。うまく仕事を回す、自分の時間を確保するためには、やはり断る力が必要なのかもしれません。このあたりは『エッセンシャル思考』にもある内容でしたので注目でした。

この本に書かれている内容を意識して、まずは自尊心を育てることから始めてみようと思います。

 

内容

人生がうまくいっている人の特徴は「自尊心」が高いことだと著者はいう。自尊心とは、自分を大切にしようとする心だ。自尊心のある人は常に自信に満ちあふれ、失敗やまちがいを犯しても、それを前向きにとらえて次のステップの土台にする心の余裕がある。人生のほとんどすべての局面に自尊心は大きな影響を与えることになる。
本書で著者は自尊心を高める方法を100項目紹介している。これを読めば、自信を身につけ、素晴らしい人間関係を築き、毎日が楽しく過ごせるはずだ。
どこから読んでもいい。そして、できることから実践しよう。あなたはもう、うまくいっている!Amazonより

著者紹介

著者 ジェリー・ミンチントン
Jerry Minchinton
アメリカの著述家。多年にわたり経営者としてビジネスに携わるうちに「人が自尊心を高め、自らの価値を確信することが、人生における成功や幸福に直結する」ということに気づき、
自尊心に関する研究をおこなう。著書は本書をはじめ『心の持ち方』『じょうぶな心のつくり方』など多くが日本でベストセラーになっている(いずれもディスカヴァー刊)。

Amazonより

 

 

製造業の財務分析 業種別分析ポイント②

業種別の財務分析のポイントとして前回は卸・小売業を取り上げました。第2弾は製造業について書いて参ります。

www.magta.net

在庫に着目した分析

売上総利益の低下は製品競争力の低下

売上総利益率は製品の競争力を表しているとも言われます。製品自体の競争力が低下すると、今まで通りの価格では販売できなくなるため、販売価格を下げることになり、結果として、粗利が低下します。

棚卸資産回転期間の長期化は製品競争力の低下

在庫の動きは製品の競争力や製造能力の帰結であり、「メーカーとしての本質的な競争力が表れる」との見方があります。

 

上記の2点に該当する場合には、既存製品の競争力低下は顕著であり、今後の事業を支えるべき付加価値の高い新製品の開発が必要となります。

 

生産現場との関係性

製造業の場合には、財務分析のみならず生産現場(工場)の生産性の分析も重要となります。

現場の留意点

一般的なポイントは下記のとおりとなります。

  • 整理整頓状況
  • 材料・仕掛品・製品在庫の多寡・保管状況
  • 不良品の量及び管理状況
  • 現場行員の作業態度
  • ノウハウの蓄積・独自の技術

これに加え、「各製造現場の役割」が明確となっており、「受注上の決め手は何か」、「製造現場の特徴や強みを強化するための具体的な施策は行っているか」といったことも重要になってきます。

 

企業の事業基盤や生産能力によって、状況は異なるため一概には言えませんが、自社の財務と現場の上記のポイントをチェックした後に、「納期遅れの割合とその原因」や「操業度の変動とそれに対するオペレーション(固定費合理化や労働分配率)」、「不良率の推移と発生原因」などに焦点を当てた分析を行うとより深い分析が可能となります。

 

卸・小売業の財務分析 業務別分析ポイント①

前回は「財務分析」という大きな視点で、分析方法や指標について書いていきました。今回からは、業界別により詳しくご説明してまいります。業界ごとに決算内容の特徴や、金融機関からの目線も異なるため、自社が属する業界の特徴を抑えたうえで分析することでより精度や確度を上げることに繋がります。

今回は「業務別分析ポイント①」ということで、卸・小売業界の財務分析の着目点について書いていきます。

業界特色

卸・小売業界の中小企業者の経営環境は厳しい

かつて高度成長期においては、中小の卸・小売企業は需要の拡大を背景にした、市場全体の成長により大きく利益をあげ成長していました。

しかし最近では「消費の多様化」「競争の激化」「インターネット通販の台頭」などにより、「勝ち組」と「負け組」の明暗がはっきりと分かれるようになりました。後者の企業については後継者不足もあり、今後急速に淘汰が進む可能性があります。

このような事業環境下において、企業の生き残りの方向性を考えた場合、商品開発力や仕入れコストについては大規模企業のスケールメリットが圧倒的に優位であり、中小企業者の不利は多くある状況です。

そのため、大手とは異なる特色を打ち出すことが必要になります。しかし「言うは易し行なうは難し」です。市場や自社の状況を正しく把握すること、事業環境に応じた商品管理体制を構築することが必要になります。

財務分析のポイント

まずは「実態財務諸表」の作成が重要なポイントです。実態財務諸表を作成し、課題を洗い出し、掘り下げて分析していきます。

卸・小売業における金融機関の目線では、粉飾決算の観点からも「売上債権」と「棚卸資産」が注目されます。

小売業の回転差資金

回転差資金とは?

仕入代金の支払期日が売上代金の回収期日より先であるために生じる余裕資金をいいます。貸借対照表で表すと、「売掛金<買掛金」の状態における差額です。主に小売業においては、日々の現金商売による売上があり、仕入れについては掛けであるために発生します。

この回転差資金は、売上が増加すると増えますが、売上減少局面では大幅に減少し。手元流動性がないと資金繰りに窮します。

回転差資金の戦略

商品仕入の支払期日をできる限り伸ばすことで、余裕資金を生み出し、業容を拡大していく方針です。

資金の調達方法としては、「利益(内部留保)」・「金融機関借入」・「増資」などがあります。「利益」は相当金額が納税や配当に回さざるを得ず、「借入」は金融機関の影響力が増し、「増資」は実質的な調達コストが高くなります。

回転差資金を活用することは、コスト・自由度の両面において有利な資金となるため、売上が拡大する成長期においては自ずと役割が大きくなります。

回転差資金のリスク

回転差資金による戦略が成り立つのは、売上が右肩上がりに伸びている成長局面です。

売上減少期には回転差資金がマイナスとなり、手元資金に余裕がないと大きな事業リスクを負うことになります。

多店舗展開の戦略

店舗展開の合理的判断

多店舗展開における投資評価は「投資金額」と「獲得キャッシュフロー」、つまり投資とリターンの関係として判断することが重要です。

損益計算書だけの判断で、「当期純利益」がプラスとなっている状況での撤退の判断は難しいです。

しかし、キャッシュフロー計算書をもとに冷静な分析を行うと、設備投資の効率について見えてきます。毎期黒字計上であっても「フリーキャッシュフロー」が多くの期でわずかなプラスもしくはマイナスとなっている状況では、設備投資が業績向上に結びついていないことになります。多店舗展開時におけるフリーキャッシュフローの不足原因は、「有形固定資産の取得による支出」とそれに伴う「棚卸資産の増加」が大きいと考えられます。このため資金の捻出については「借入金の増加」「現預金の取り崩し」により資金不足を賄わざるを得ないことになります。

このような状況下において、この企業が売上減少局面に陥った場合、先程の回転差資金が逆回転し急速な資金減少に見舞われることがあり注意が必要です。

このようなことが起きないように、店舗展開には「投資とリターン」の合理的判断が必要となります。

設備投資とキャッシュフローの関係

一般論として設備投資は「営業活動によるキャッシュフロー」の範囲において行われるのが望ましいと言われます。その範囲を超えた積極投資は企業規模拡大のスピードが非常に早い反面で借入金が急速に拡大します。

そのため、拡大志向を継続し積極的な設備投資を続けていくためには、キャッシュフローの改善が極めて重要となります。

在庫管理の徹底

順調に売上が拡大している状況では、回転差資金も大きく生み出されます。反面、何らかの事情により規模拡大にブレーキがかかり、売上減少局面となった場合には急速な資金不足となる懸念があります。

よってキャッシュフロー改善には、在庫管理(売れ筋管理)の徹底による運転資金の節約が、拡大路線を維持するうえで重要なポイントとなります。

 

 

今回は小売業・卸売業の特徴と財務分析について書きました。

業種柄、現金商売のため経常的な運転資金は少なくてすむものの、売上減少局面においては回転差資金が逆回転し急速に資金が減少します。そのため日頃から自社の財務をモニタリングし、柔軟に戦略を練っていくことが重要であると感じます。

基本の財務分析

最近はコロナウイルスの第7波が到来したとも言われ、コロナによる経済への打撃は大きく、いまだ影響を計り知ることは難しいと思えます。中小零細企業では、コロナウイルスによる無利息型融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」を利用して資金繰りを回している企業も多くあると思います。すでに返済が開始となっている企業、これから返済開始となる企業など、経済情勢が不安定なかで経営の舵取りを行わなくてはなりません。場合によっては、金融機関と交渉が必要になることも出てくるかもしれません。

今回は決算書における財務3表(貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書)を用いた分析について書いていきます。

 

財務は単なる数字と思わずに、経営の一つの指針とすることで、企業経営が好転する可能性も多く秘めていると私は思います。融資審査において金融機関が決算書のどこに着目しているのか、についても散りばめながら書いていきます。

 

財務分析とは財務諸表のデータから、企業の経営成績や財務状態を測ることです。企業の収益性・生産性・安全性・成長性などを知ることができる他、企業がどのような業務で利益や損失を出しているのか、支払能力や倒産リスク、今後の成長性などが見えてきます。

企業のみならず、その企業の業界情報などから事業環境(マクロ面)や業界企業の現状(ミクロ面)といった必要な情報を集めることも大切です。

財務分析の方法

財務諸表の分析には「実数分析」と「比率分析」という2種類の分析方法があります。

  • 実数分析…財務諸表に記載されている数値をそのまま用いて分析する手法。売上高や販売数量の増減など、「量」に関する分析をするのに適している。
  • 比率分析…自己資本比率や経常利益率など、財務諸表の数値をもとに様々な比率を求めて行う分析手法。比率をもとに分析することで、事業の収益性や安全性など可視化できない要素を客観的に把握できる。

財務分析における着眼点や指標は複数ありますが、企業の財務をおおまかに把握するためには、「売上高」「経常利益率」「総資本」「自己資本比率」の4つについて、業界平均との比較をすると効果的です。「売上高」は企業の競争力、「経常利益率」は利益獲得力、「総資本」は企業体力、「自己資本比率」は安全性を示しています。

財務分析の概要

「異常な兆候」を探す

収益性や安全性、成長性といった、財務上の「主要比率」について「時系列分析」と「業界平均との比較分析」を行います。その中で「前期より大きく変動した項目」「業界平均と大きく乖離している項目」について、そうなった原因を分析します。

その原因が特殊要因ということであれば、正常な状態における数値へと修正し、改めて分析を行い、実態と本質的な問題を把握します。

注意点
  • 恒常的か、一時的かの見極め
  • 異常原因の分析と把握

異常な兆候を発見したら、それが「恒常的」なのか「一時的」なのかの見極めが重要となります。また、原因についても正確に捉える必要があります。

分析指標の選択

財務分析は、目的やニーズによって活用する指標や分析内容が異なることが多くあります。「企業を将来どのようにしたいのか」、「財務上の強みや弱みはどこなのか」など、必要とする目的に合った的確な分析や評価を行うことが重要になります。

決算内容についての理解

財務分析指標については、一概に「何%であれば良い」というものでもなく、企業の課題や強み・弱みを認識するのことが大切です。財務分析とは「過去の数値を用いたものであり、数値だけでは将来予測の精度に限界があることを忘れてはなりません。そのため財務分会計以外の要素や情報についても収集しておくことが大切です。

 

貸借対照表の分析

貸借対照表の分析については、まず「資産合計」を確認します。総資産は企業の財務的な規模を表しています。続いて「負債」と「純資産」のバランスによる健全性を確認します。

安全性の分析

安全性の分析とは、企業の支払い能力を表すもので、倒産リスクを確認できます。返済能力として金融機関からも注目度の高い項目です。「長期的安全性」は企業の持続力、「短期的安全性」は当面の資金繰りを表しています。

安全性に対する金融機関の視点

金融機関が重視するのは、安全性の指標であることが多いです。そのため「自己資本比率」「固定比率」「固定長期適合率」の3項目を業界平均レベルまで高めることが大切です。

自己資本比率

自己資本比率(%)=(自己資本÷総資本)×100

資本金や利益剰余金で構成されており、返済義務はありません。つまり返済不要の資金割合が高いことを意味しており、景気変動への抵抗力や競争力が強く、長期的な財務面の安定性が高いといえます。一般的には30%超が望ましいとされています。

固定比率

固定比率(%)=(固定資産÷自己資本)×100

固定資産が自己資本によってどの程度賄われているか、という固定資産に使用されている資金の安定度を測る指標です。「工場や機械設備といった固定資産を取得するために使用された資金の回収は、これら固定資産を活用し事業収益」によって行われます。そのため、固定資産の取得に使用される資金は、返済義務のない自己資本によって賄われるのが望ましいです。

この比率が低いほど、長期的な財務安全性が高いと言えます。一般的には200%を超えると危険水域と言われています。100%以内が理想であり、120%以内なら健全、とされますが、中小企業でこの水準をクリアするのはハードルが高いのが実情です。

固定長期適合率

固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

固定資産へ投下した資金が「自己資本」と「長期借入金を中心とした固定負債」という長期的に安定した資金によってどれだけ賄われているかを見る指標です。

先ほど述べたように、固定費率の基準は中小企業の実態にはそぐわない為、この固定長期適合率を用いることが多いです。固定費率が100%を超えていても、固定長期適合率が100%以内であれば健全とされます。100%超となると、過大設備、過小資本、長期資金の調達不足を意味しており、資金の長期的安定性が必要となります。

借入債務にかかわる指標

債務償還年数

債務償還年数(年)=有利子負債÷営業利益。または、有利子負債÷営業キャッシュフロー

現状の有利子負債(短期借入金・長期借入金等)を何年間で返すことができるかをみるための指標です。

借入金対月商比率

借入金対月商比率(月)=有利子負債÷平均月商

有利子負債の多寡を平均月商との比較で検証し、企業の収益力や資産規模に比べ有利子負債の割合を見ていく指標です。

借入依存度

借入依存度(%)=(有利子負債÷総資本)×100

企業が保有する資産のうち、外部からの借入金によって賄われている部分の割合を示す指標です。この比率が高いと、借入金の返済による資金繰り負担や、金利上昇の影響を受けやすいと言えます。

有利子負債比率

有利子負債比率(%)=(有利子負債÷株主資本)×100

総資本利益率の低さに対し、有利子負債が急増する場合などは、支払利息負担が重くなり、事業リスクが増大するため、警戒が必要になります。

企業の長期的安全性と事業戦略

企業が安定した経営体質を確立するためには、安全性の指標向上が重要ですが、その具体的方法・方策については、企業の長期的な事業戦略を考慮したうえで対策を立てることが肝要です。

例えば、積極的な事業展開を長期戦略としている企業は、増資などにより純資産を増強したりします。逆に衰退期にある企業は投資を抑制し、余剰資産の削減等による固定資産と債務の圧縮をはかることが必要になります。このように事業の長期的見通しと戦略を考慮し、慎重な検討を行うことが大切です。

流動比率

流動比率(%)=(流動資産÷流動負債)×100

流動比率」は短期的な支払能力を分析する際における指標の一つです。短期的債務である流動負債を返済する力がどれだけあるか、運転資金のゆとりを示す代表的な指標です。この比率が高ければ、負債を返す力が大きいということになり、当面の支払能力に問題はないと判断できます。

流動比率は一般的に120%から140%程度あることが望ましいとされています。この比率が100%を下回ると短期的な支払が苦しくなり、安全性が懸念される事態であると考えられます。同業他社の数値と比較分析をし100%を下回る状況が続くようであれば、「増資による自己資本の増強」や「短期借入金の長期借入金への借換」などを検討する必要があります。

当座比率

当座比率(%)=(当座資産÷流動負債)×100

当座資産は流動負債を返済する財源として、当座資産を使用し計算した場合の即時返済能力を表す指標です。

当座資産とは比較的短期間のうちに容易に現金化できる流動資産で、現預金・受取手形売掛金・市場性のある有価証券などが含まれます。その為、当座比率流動比率と比べ、より現金に近い指標となり、100%を上回っていれば支払能力が高く、80%が望ましいとされています。

 

運転資金の分析

正味運転資金

「正味運転資金」とは流動資産から流動負債を差し引いたものです。正味運転資金が潤沢にあれば、一般的に資金繰りは余裕があると言えます。

経常運転資金(正味営業運転資金)

経常運転資金(正味営業運転資金)=売上債権+棚卸資産仕入債務

「経常運転資金」とは、企業が正常な営業を継続するために必要な資金を表しています。この金額は業種や各企業の状況によっても異なります。

 

売上債権・棚卸資産の指標

過大な棚卸資産や回収困難な債権は、利益に大きな影響を及ぼすだけでなく、劣化や陳腐化リスクの高止まりによって、貸借対照表を実態面から悪化させる危険があります。このため棚卸資産保有量が適当か否かを検討することは重要なポイントになります。

棚卸資産に関わる指標

事業の評価や戦略の検討にあたっては、在庫管理に関わる分析が極めて重要になります。

棚卸資産回転期間

棚卸資産回転期間(月)=棚卸資産÷(売上原価÷12)

保有している棚卸資産が、売上原価の何ヶ月分かを示す指標です。短いほど良く回転していることを表しています。

棚卸資産構成比率

棚卸資産構成比率(%)=(棚卸資産÷総資産)×100

総資産のうちに棚卸資産がしめる割合を表しています。

在庫の合理化は「店舗の商品管理レベル」と「品切れによる機会損失」を十分に考慮し具体的な方策を決定することが大切です。

債権・債務にかかわる指標

売上債権回転期間

売上債権回転期間(月)=売上債権÷平均月商

売上債権が平均で何ヶ月で回収されているかを表しています。長い場合は、不良債権の発生や回収条件の妥当性を検証する必要があります。

仕入債務回転期間

仕入債務回転期間(月)=仕入債務÷平均月商

仕入代金の支払状況を表す指標です。長いほど支払いは楽になりますが、デメリットとしては一般的に仕入価格が不利になる傾向があるため、同業平均との比較や時系列分析によって妥当性を判断します。

 

損益計算書の分析

一般的な着眼点

売上総利益

売上総利益率(%)=(売上総利益÷売上高)×100

売上総利益率が変動している場合、原価の内訳を費用ごとに分析します。

販売管理費

人件費の多寡や多額の経費項目の妥当性及び合理化の可能性を検証します。

製造原価中の労務費等の固定費推移

売上高の変動に対し、弾力的な対応ができているかを検証します。特に売上減少局面においては固定費が主要なコストアップ要因となり損失発生の原因となるケースもあります。

材料費比率

材料費比率(%)=(材料費÷売上高)×100

時系列分析・同業比較分析を行い、コストアップや歩留まり悪化の可能性を検証します。

外注費比率

外注費比率(%)=(外注費÷売上高)×100

時系列分析・同業比較分析を行い、大きく変動している場合には、内容と原因を確認し、内製化の可否、妥当性の検証を行います。

収益比率による分析

総資本経常利益率

総資本経常利益率(%)=(経常利益÷総資本)×100

収益性を表す代表的な指標です。高いほど良いとされています。

総資本回転率

総資本回転率(回)=売上高÷総資本

「総資本が何回転したか」によって資産の活用状況を表しています。低い場合には不良資産や有休資産の有無、資産内容を確認します。

営業利益率

営業利益率(%)=(営業利益÷売上高)×100

通常の営業により獲得した営業利益の売上高に対する割合を表しています。

経常利益率

経常利益率(%)=(経常利益÷売上高)×100

経常的な企業活動の収益力を表す指標です。

営業費比率

営業費比率(%)=(販売費及び一般管理費÷売上高)×100

売上総利益率の70%が望ましいとされていますが、業種により異なるため、中身を個々に検証する必要があります。

従業員一人当たり売上高

従業員一人当たり売上高=売上高÷従業員数

労働生産性を表す代表的な指標です。

従業員一人当たり人件費

従業員一人当たり人件費=総人件費÷従業員数

人件費の水準の妥当性を調べるため、時系列分析・同業比較分析を行います。

労働分配率

労働分配率(%)=(人件費÷加工高)×100

加工高=生産高-外部購入価格(材料費、外注費など)

加工高に占める人件費の割合です。高くなると利益を圧迫することになります。

成長性の検証

売上高が、時系列分析において増加していたり、同業比較分析を行い多いということは、それだけ企業の競争力が高いことを表します。

成長性とは売上の増加、利益の増加、資本の増加など、様々な考え方があります。また成長性には中身の確認が欠かせません。一時的なのか恒常的なのかを調べる必要があります。

設備投資の考え方

設備投資と経済情勢

「過ぎた設備投資は命取りになる」と言われますが、生産能力の増大を狙った「拡張投資」を行うケースについては、設備投資後の一定期間において売上などが伸びていなければなりません。設備投資をしても受注や売上が伸びていかないと、その設備投資に伴う費用が重くのしかかり、事業継続上の課題となる場合もあります。

設備投資を財務面から考えると、設備投資を行うと固定費(減価償却費、労務費、支払利息等)が増加し、損益分岐点が上昇します。そのため売上高が一定以上に増加しなければ、損益面・資金面でも厳しい状況になってしまいます。

設備投資の適正化を測る指標
  • 有形固定資産構成比率

総資産の中に占める有形固定資産の割合を示すものです。この割合が高い場合、好況で生産量が増加している時期は大きな優位性を生み出しますが、不況期においては重荷となります。同業他社と比較分析を行い、大きく乖離しているようであれば、稼働状況を検証する必要があります。 

有形固定資産構成比率(%)=(有形固定資産÷総資産)×100

  • 有形固定資産回転率

有形固定資産の活用状況を示します。有形固定資産がどれだけ売上を獲得する力があるのかを判断できます。

有形固定資産構成比率が高くても、この有形固定資産回転率が業界平均以上であれば問題はないと言われています。

有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産

インタレスト・カバレッジ・レシオ

「インタレスト・カバレッジ・レシオ」とは、営業利益と金融収益(受取利息・配当金など)が、支払利息をどの程度上回っているかを示し、企業の財務体質の健全性を評価する要素の1つです。この比率は企業の金利負担能力を図る指標として用いられ、高いほど財務的に余裕があることになります。

ただし、成長過程の企業においては、借入金をしてでも事業拡大をすることが必要なことがあるため、この比率の妥当性については、事業のライフサイクルを考慮することが重要です。

インタレスト・カバレッジ・レシオの評価

インタレスト・カバレッジ・レシオが1倍を下回ると、事業収益から借入金等の利息を支払う力が無いことになるため、早急に改善策を講じる必要があります。

インタレスト・カバレッジ・レシオの改善策

事業利益の増加、金融費用の削減がポイントになります。

事業利益増加には、利益率の改善や人件費や経費の圧縮、効率化を図ります。

金融費用の削減は、借入金の圧縮、回し手形等による割引料の減少などが検討材料になります。

 

キャッシュフロー分析

かつての金融機関の与信審査では「損益計算書による利益」と「担保などの保全状況」が大きなウエイトを占めていました。しかし近年ではキャッシュフローの重要性が増してきています。企業にとっても、キャッシュフローの創造力は事業存続の成否の重要な要素となります。

ここではキャッシュフローを使った分析指標をあげていきます。

収益性の指標

キャッシュフローマージン

キャッシュフローマージン(%)=営業キャッシュフロー÷売上高×100

本来の営業活動により、どれだけの営業キャッシュフローを稼ぎ出したかを表す指標です。時系列分析によりその推移と水準を分析します。

利益割合

利益割合(%)=当期純利益÷(当期純利益+減価償却費)×100

「営業活動によるキャッシュフロー」の主要要素である当期純利益減価償却費の割合を見る指標です。これにより企業の「営業活動によるキャッシュフロー」の特徴を分析します。

一般的に当期純利益の割合が大きい場合、キャッシュフローが不安定になりますが、成長性は高いと考えられます。逆に減価償却費の割合が大きい場合には、安定性が高いと考えられます。

安全性比率

キャッシュフロー当座比率

キャッシュフロー当座比率(%)=営業キャッシュフロー÷流動負債×100

当座比率キャッシュフロー版とも言え、短期的な返済能力を表しています。当座比率では決算時の一時的な残高を表しているにすぎないため、貸借対照表から算出される当座比率と、キャッシュフロー当座比率を組み合わせて実態を検証することが大切です。

キャッシュフロー比率

キャッシュフロー比率(%)=営業キャッシュフロー÷長期負債×100

有利子負債のうち、元本返済が必要となる長期負債に対して、営業キャッシュフローでどの程度賄えているかを見る指標です。インタレスト・カバレッジ・レシオと組み合わせて検証すると効果的です。

 

ここまで財務分析のやり方や着目点などについて書いて参りました。

今まで財務分析をしたことがなければ、自社の財務と照らし合わせながら、今後の経営方針や戦略を練ることで、違った発見やアイデアが出てくるかもしれません。

なにか少しでもご参考になれば幸いです。

財務3表の基礎知識

財務3表とは一般的に、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」を表しています。決算分析において広く活用されています。

今回は財務3表の概要と基礎的な部分をお伝えできればと思います。

財務3表の意義

決算書は簿記という一定のルール基づいて起票された伝票や帳簿に基づいて作成されます。

簿記では取引が「 資産、負債、純資産、収益、費用」の5つの要素に分けられます。

資産とは現金・受取手形売掛金・有価証券・不動産など、負債とは支払手形・買掛金・借入金など、純資産は資本金や繰越利益剰余金など、収益は売上高や受取利息など、費用は売上原価・給与・支払利息などをいいます。

資産・負債・純資産を表すものが、貸借対照表であり、収益・費用を表すものが損益計算書になります。

金融機関だけではなく、企業の内外には多くの利害関係者が存在し、企業の実態を知るために決算書を必要としています。決算書には様々な目的がありますが、中小企業に必要とされる決算書は、主に貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書の3つであり、これを財務3表と呼ばれています。この3つを理解することで、より深く会社や事業を把握することができるようになります。

財務分析の必要性と財務3表の相互関係

財務分析とは、決算書を見て企業の実情や現状の問題点を把握することです。そうすることで改善点を今後の経営に活かすことが出来ます。

損益計算書は決算期間1年の経営成果を表しており、「前記の貸借対照表」と「当期の貸借対照表」をつなぐ役割を果たしています。貸借対照表の左右が一致することから、例えば純資産の増加は、貸借対照表上の「左側の資産の増加」または、「右側の負債の減少」によってバランスします。資産及び負債がどのように変化したのかを確認し、その影響を分析すると効果的です。

財務3表により、企業の資産状況や営業活動が数値的に表現され、他の会社との比較分析が可能となります。

 

貸借対照表

概要

貸借対照表は、決算日における資産・負債・純資産の内容、つまり「企業の財政状態」を表したものです。

貸借対照表の構成は、左側に「資産の部」、右側に「負債の部」「純資産の部」となっています。右側が資金の調達方法、左側が資金の使途を表しています。調達した資金と使った資金は同額であるため、資産の部と負債の部・純資産の部、左右の合計金額は必ず一致します。

資金調達の部分を、負債の部と純資産の部に分けているには理由があります。負債の部が、金融機関など株主以外から調達した内訳を表しているのに対し、純資産の部は、株主からの出資や利益の留保額を表しています。このように調達原資の明確にするために分かれています。

貸借対照表の配列

資産の部は流動資産と固定資産、負債の部は流動負債と固定負債に分けられます。

資産と負債を「流動」、「固定」に区分する基準には、営業循環基準と1年基準(ワン・イヤー・ルール)があります。

そしてそれぞれの部における各科目の配列は、短期間に回収できる資産や短期間で返済すべき負債が上から順に並べられています。

  • 営業循環基準…材料、仕掛品、売上再建などのように、通常の営業活動において発生する資産と、その資産の調達によって生じる買入債務を、それらが1年以内に回収または支払われるか否かに関わらず、流動資産、流動負債とする方法。
  • ワン・イヤー・ルール…1年以内か、1年超かという「期間」を基準にして区別する方法。1年以内のものを流動性とし、1年超のものを固定性とする方法。

債務超過

貸借対照表において負債金額が資産金額を上回っている状態のことをいいます。債務超過に陥っている企業の資産価値は、既に相当程度毀損しており、資産勘定の中には不良資産や回収不能な債権が含まれている可能性が高く、実態債務超過額が公表債務超過額を大幅に上回るケースが一般的です。逆に土地や有価証券のなかには多額の含み益を持つ資産が含まれている場合もあります。

しかし一般的には、債務超過の企業は所有資産のすべてを売却しても負債を返済することが不可能である状態のため、金融機関も融資については慎重にならざるを得ません。

 

損益計算書

損益計算書はその決算期間に、「どの程度収益を上げたのか、その収益を上げるためにどれだけの費用がかかったのか、その結果どれほどの利益を成果として残すことができたのか」を表しています。

3つの収益、5つの費用、5つの利益

よく「損益計算書には3つの収益と5つの費用、5つの利益がある」と言われています。

3つの収益とは、「売上高、営業外収益、特別利益」を表しています。

5つの費用とは、「売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、特別損失、法人税等」を表しています。

5つの利益とは、「売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益当期純利益」を表しています。

損益計算書を分析する際には、5つの利益のうち上位の利益から順に検討してき、赤字に突き当たったら、そのすぐ上の費用に重点を当てて詳細に分析を行います。

 

キャッシュフロー計算書

意義と重要性

キャッシュフロー計算書は「期初にあった現金が、事業活動の成果により期末時点ではいくらになったか」という現金の出し入れと内訳を表しており、「企業の一定期間における現金の流れ」を表しています。

キャッシュフロー計算書は損益計算書と異なり、実際に現金が動いた事実に基づいて作成されるため、企業ごとのブレが少なく、事業実態の把握や企業間の比較分析にも活用できるなど、実態の分析に適しています。  

3つのキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフロー

本業により獲得したキャッシュの流れを表し、事業単体のキャッシュフロー創出力を図る指標となります。「営業活動によるキャッシュフロー」は、事業本来の成果によるものであり、優良企業はこの数値がプラスとなり、金額が大きければ大きいほど良好な会社であると推測できます。

投資活動によるキャッシュフロー

営業活動により得たキャッシュを、どのような投資に使ったか、または投資からどのようにして回収したかを表します。投資の財源がどこになるかも重要となります。投資財源として一般的に望ましい形は「営業活動によるキャッシュフロー」の範囲で投資活動を行なっていくことだと言われていますが、事業のライフサイクルがどの段階にあるかによって投資財源が変わって然るべきです。

財務活動によるキャッシュフロー

借入金の調達や返済などを表します。

キャッシュフロー分析に使われる指標

フリーキャッシュフロー

現在の事業水準を維持したうえで、会社が自由に使えるお金を表しています。理論的には「営業活動によるキャッシュフロー」から「現状の事業を維持するために必要とされるキャッシュフロー」を差し引いた金額を言いますが、数値の把握が困難であるため、簡易的に「営業活動によるキャッシュフロー」から「投資活動によるキャッシュフロー」を控除する方法で算定されることがあります。

EBITDA

支払利息、税金、減価償却費を差し引く前の利益を意味しており、設備や借入金の大小並びに会計処理の違いなどによって生じる影響を取り除いた純粋な収益力を分析するために使われます。

この指標は減価償却費や支払利息の影響を排除できるため、事業の正常な収益性を時系列で比較することができます。

 

 

倒産法と事業再生 ~事業再生③~

「倒産」という言葉はよく耳にします。しかし「倒産」を厳密に定義すること(どの時点で倒産というか)は困難です。おおまかには、債務者が従来の経済活動や経済生活を維持しながら、弁済期にある債務の大部分を返済することが困難な状況に陥っている状態を「倒産」や「倒産状態」であると考えられます。

より具体的には、手形の不渡り、夜逃げ・店じまい、支払停止、破産・民事再生・会社更生手続開始の申立て、などの行為により「倒産した」と言われることが多いです。

企業の倒産は様々な原因によって引き起こされます。内在的な原因としては、①設備過剰、②放漫経営、③合理化の立ち遅れ、④技術革新競争による敗北、⑤労働争議などがあります。外在的な原因では、①国際経済の急変、②国内の産業政策の転換、③深刻な不況などが考えられます。また1つの企業が倒産すると、その債権者が自己の債務の返済資金として予定していた債権の回収ができなくなる結果、同様に倒産に至る「連鎖倒産」が生じる危険性もあります。

倒産手続の目的

このように企業の倒産という事態は、関係者にとって不幸なことですが、社会全体という観点からは、当該企業には不健全な経済活動を止め、企業を解体・清算したり、健全な形での再出発を促したり、当該企業の経営破綻による関係者への損害を最小限に食い止め、総債権者に対して公平かつ最大限の満足を与えるための制度が必要になります。これが企業が倒産した場合に倒産処理手続が必要とされる理由であると思われます。

法的倒産処理の必要性

倒産という現象は、社会活動の中で必然的に生じるものであり、古くから自然と生まれてきました。今日のように再建型倒産手続が整備されていなかった時代には、多くの倒産事件が債権者と債務者とが任意に協議をする私的整理によって処理されてきました。それにも関わらず、法的整理手続が設けられているのは、多くの私的整理で下記のような点で限界があるからだと考えられます。

  • 債権者間の公平の確保
  • 債務者の詐害行為の防止
  • 不正な目的をもった第三者の介入の排除
  • 大規模倒産事件の処理
  • 不良債権整理の必要性

法的整理手続の分類

法的整理手続は大きく「清算型」と「再建型」に分けられます。

清算型手続きは、債務者の全財産を換価して、総債権者に債権額に応じて分配します。当然に事業解体、会社の解散・消滅を導きます。

再建型手続きは、債務者の事業の収益力を向上させ、他方でその債務を向上させた収益力で支払える範囲に圧縮することで、その支払い能力を回復させ債務者を経済市場に戻す。

 

清算型倒産手続

清算型倒産手続は破産手続、特別清算に分けられます。

破算手続

破産手続は債務者の種別に関わらず、広く適用される一般的な清算型手続です。

破産手続は破産手続開始決定と同時に裁判所によって弁護士の中から選任される破産管財人が、裁判所の厳格な監督下で得た破産財団を管理・処分して得た金銭を、総債権者にその優先順位に従って公平に分配していく管理型の清算手続となります。

換価金を債権者に康平に分配するという破産手続の目的は、企業の企業・事業者には妥当しますが、個人債務者の破産の場合には実際は配当原資となる財産が殆どなく、債権者に配当がなされるのは珍しいことになります。

破産手続きは破産手続開始原因(支払不能債務超過)が存在するときに、債務者会社自身、取締役、債権者の申立てに基づき、裁判所が発令する「破産手続開始決定」により開始します。

破産手続の手続機関には破産管財人、債権者集会、債権者委員会などがあります。

個人破産

個人破産は2003年に24万件超の破産手続開始決定がありました。その背景には消費者金融・割賦販売・ローン提携販売・クレジットカードによる信用取引が、一般に広くかつ急速に浸透したことが要因の一つであると考えられます。

個人が破産した場合に、その経済的更生のために重要な役割を果たすのが、免責許可決定によって破産債権につきその責任を免除する破産免責制度です。破産免責制度には更生手段説と特典説があります。

更生手段説

不誠実でない債務者の更生手段とみる考え方。個人債務者の破産を消費者信用の膨張に伴って必然的に生じる現象と捉え、多重債務に陥った債務者を経済的に更生させるため、積極的に破産免責を運用すべきであるとする。

特典説

誠実な債務者に対する特典という考え方。消費者信用が膨張する中でたとえ個人債務者が多重債務に陥ったとしても、その責任は基本的に債務者本人にあり、安易な免責付与により債務履行についての責任感を失わせるのは好ましくないとする。

特別清算手続

破産手続が債務者の種別を問わずに適用される一般的な清算型手続であるのに対し、特別清算は既に解散し清算手続に入っている株式会社に適用することを予定した清算型倒産処理手続です。

通常清算の手続きに入った企業に、債務超過の疑いや、清算に支障をきたすような事情が明らかとなった場合、債権者や株主といった利害関係者の対立が生じてきます。このような場合に、裁判所の監督のもとに、従前の清算人が専ら債権者との交渉に基づいて作成する「協定」を軸として進める特別の清算手続となります。特別清算は利害関係人によっる自治が重視されており、破産と比較するとはるかに簡易で柔軟な清算手続となります。ただ特別清算はあくまでも清算手続の延長、通常の清算手続を厳格化した特殊な清算手続であり、破産手続の特別手続ではありません。

特別清算の手続開始原因は、①会社の清算事務の遂行に著しい支障をきたすべき事情があること、②会社に債務超過の疑いがあること、です。「債務超過の恐れ」「支払不能」はその事実が発生した時点では会社が事業を継続していることが前提の概念であるため、既に解散し清算の株式会社を前提とした特別清算では、手続開始原因とはなりません。

手続機関には清算人、清算会社の行為制限・監督委員、調査委員、債権者集会などがあります。

 

再建型倒産手続

民事再生法とは

従来の和議手続のもつ債務者主導の簡易な手続としての性格を維持しつつ、和議手続の欠陥をできる限り是正する形で創設された、再建型の一般手続としての民事再生手続に関する基本法です。

通常再生手続

民事再生手続の対象となる債務者の範囲については特段の制限を設けていません。医療法人や学校法人、個人事業者も利用が可能です。民事再生手続は、債務者に再生手続開始原因があり、申立権者による適法な申立がなされ、かつ申立棄却事由が存在しないときに裁判所の手続開始決定によって開始しますが、裁判所が職権により再生手続を開始することはありません。

再生手続開始原因
  1. 破産手続開始原因たる事実(支払不能債務超過)が生ずるおそれがあるとき
  2. 債務者が事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき
再生の3パターン
  1. 再生手続では債務者自身が再生手続開始後も、そのまま業務の遂行及び財産の管理処分を継続しながら事業の再建を目指すDIP
  2. 監督委員による監督を命ずる監督命令を発令し、監督委員の監督下で再生債務者が事業の再建を図る方式
  3. 再生債務者が法人の場合で、現経営陣にそのまま業務の遂行・財産の管理処分を委ねることが不適切な場合には、開始決定前に保全管理命令を発令し、保全管理人に再生債務者の業務遂行・財産の管理処分を委ね、開始決定後に引き続き管理処分を委ねる管理型
再生計画

再生債務者の事業の再建には、原則として債務者自身が作成した「再生計画」と呼ばれる再建計画に従って行われます。再生債務者等は、再生計画案を裁判所の定める期限内に提出します。

しかし、再生債務者たる株式会社が債務超過の状態で、再生計画の認可までに事業の価値が劣化が著しく、事業の維持・継続に支障が生じる場合は例外的に手続き開始後再生計画によることなく、かつ株主総会の特別決議がなくても、裁判所の許可だけで第三者に事業譲渡を行うことができます。

個人再生手続

消費者信用制度の国民への浸透という構造的要因に加え、バブル経済崩壊後の長引く景気低迷などが重なり、個人破産申立件数は増加傾向でありました。個人再生手続はこのような状況下で、従来の法的倒産手続間にある間隙を埋め、個人の経済生活の再建のために選択しうるメニューを多様化させるために導入されました。個人債務者はこの手続を利用することで、通常の民事再生手続より簡易・合理化された手続で、破産手続の利用による不利益を避けながら、また他方で、民事調停では得られない強制力ある弁済計画を立てることを目的として導入されています。

個人再生手続の概要

個人債務者のために特化された再生手続としては、小規模個人再生と給与所得者等再生があります。

小規模個人再生

零細事業者を含む個人に対する特別の再生手続です。対象者は、将来において継続的または反復的な収入の見込みがあり、かつ無担保の再生債権総額が5,000万円未満の個人債務者です。再生計画は再生債務者のみが提出します。

給与所得者等再生

サラリーマン、OLが対象となります。小規模個人再生との共通点が多いですが、一定の弁済額を確保することを条件にして、再生債権者の決議自体を省略する点が最大の特徴です。よって弁済計画による弁済がその収入に照らして合理的かつ最大限のものであることが客観的に確認できるものですなければなりません。

民事再生法による民事再生手続は通常再生、小規模個人再生、給与所得者等再生の順で、手続を利用できる債務者の範囲が狭められている。

会社更生手続

会社更生は、株式会社に特化した再建型の倒産処理手続です。事業の維持・再建に向けて強力かつ豊富な手段が整備されされている制度となります。

会社更生法の特徴は、大規模な株式会社の迅速かつ円滑な再建を可能とするため、更生手続の迅速化及び合理化を図るとともに、再建手法を強化し、現在の経済社会に適合した機能的な手続きに改めた点になります。

会社更生手続と民事再生手続との間には、担保権や租税債権などの処遇につき歴然とした違いがあります。しかし民事再生手続でも管財人が選任されるケースや、DIP型会社更生手続の導入、会社更生手続の利用会社の小規模化など、実際の運用の場面での両手続の差は小さくなってきています。

更生手続の開始原因
  1. 破産の原因たる事実が生じるおそれがある
  2. 事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができない
手続機関
  • 更生管財人
  • 関係人集会
  • 更生債権者委員会・更生担保権者委員会・株主等委員会
更生計画案

更生計画案は、更生管財人が立案し裁判所に提出するのが普通でありますが、会社・更生債権者・更生担保権者・株主も、独自の計画案を提出することができます。

更生計画案が裁判所に提出されると、更生計画案について決議が行われます。法廷多数決にて可決され裁判所が認可すると、更生計画の効力が生じ、各関係人の権利は更生計画が定める内容に変わり、もとの権利はなくなります。

 

裁判外の倒産処理手続

法的整理手続は、多かれ少なかれ債務者に倒産企業ないしは破産者の烙印を押し、その再生を困難にするという要素を抱えています。そこで裁判外の(合意による)より緩やかな手法による倒産処理が求められています。裁判外の倒産処理は私的整理と倒産ADRとに分かれます。両社は中立的な第3者が手続きに介在するかによって区別されます。中立的な第3者が介在する場合を、倒産ADRと呼んでいます。

 

私的整理

私的整理とは裁判外で(合意により)、債権者と債務者とが任意に協議をして債務整理をすることです。ながく多くの倒産事件が私的整理により処理されてきました。私的整理では私的自治の原則が支配し、法定の手続が決まっているわけではありませんが、一応の手続慣習が事実上出来上がっています。私的整理では、利害関係人による話合いとそれを踏まえた債権者委員長や弁護士の創意・工夫により各事件の個性に合わせた弾力的な処理を行うことができるのが特徴です。

私的整理の課題

私的整理はうまく行われれば理想的な倒産処理が実現できますが、以下のような課題もあります。

  • 手順が法定されていないため、透明性や予測可能性の点で限界がある
  • 裁判所の監督がなく、保全処分、強制執行の停止、否認権などの、手続を適正に担保するためのシステムが全く備わっていない。
  • あくまでも債務者と債権者の合意に基づく手続であることから、両者の交渉が必ずしも透明なものとは限らない。
経営者ガイドライン

私的整理には多くのメリットがあるものの、手続の透明性や予測可能性の限界により、実際に債務者企業の実情に沿わない安易な債権カットや問題の先送りに留まるケースもありました。

そこで金融機関の不良債権処理と企業の過剰債務問題を一体的・抜本的に解決するため、「私的整理ガイドライン」が策定されました。私的整理ガイドラインは、複数の金融機関に対して返済困難な債務を抱えた企業のうち、過剰な債務をある程度軽減することで再建できる可能性のある企業を救済するため、債務者企業と複数の金融機関が協議したうえで、債権放棄やデット・エクイティ・スワップなどの金融支援を行い、公明正大で透明性のある私的整理を行うための手続準則のことをいいます。

基本的には資金繰りに窮する以前よりも早い段階で私的整理に着手し、迅速に事業再生を目指すものであり、商取引債権を毀損することなく、通常の営業を維持することが当然の前提とされています。

倒産ADR

裁判外で中立公正な第三者の関与によって、債務者の倒産処理、事業再生を目的として再建契約や債務調整の合意を測っていく手続をいいます。簡易迅速性・柔軟性・秘密保持性・当該企業の事業価値の毀損を防ぐことができます。

倒産ADRには、介在する中立的第3者の設営者・運営者の属性に応じて①司法型、②行政型、③民間型の3種類があると言われています。

司法型倒産ADR

従来からある民事調停法のもとで、事実上、倒産処理手続としての機能を営んできた、債務弁済協定調停の機能を充実・強化する目的で行われます。

行政型倒産ADR 

中小企業再生支援協議会が行う倒産ADRで。産業再生機構と異なり、金融債権の買取などはなく、あくまでも中立的な第三者としての立場で債務者の事業再生に関与する。

民間型倒産ADR

特定認証ADRのことをさします。基本スキームは私的整理ガイドラインの事業再生スキームに依拠したものですが、特定認証ADRでは特定認証ADR事業者があくまでも中立的な第3者として債務者の事業再生に関与するという点では、私的整理ガイドラインに基づく事業再生とは決定的な違いがあります。