まぐ太の金融と経営の扉

金融や経営に関することを書いていきます

事業再生の経緯 ~事業再生とは①~ 

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事業再生を検討する原因は様々ですが、「収益の低迷や資産価値の毀損等を原因として、独力での事業の継続に支障をきたしている。また近い将来に支障をきたす恐れのある」企業が対象となることが多いです。このような事業者は、過剰債務や営業キャッシュフローがマイナスである等の状態であることが予想されます。

事業再生はこのような状態を解消するために、事業再構築や財務再構築を実行することにより、持続的な事業の存続及び成長を可能とするプロセスです。

経営不振の原因

経営不振の原因の多くは、生産設備の稼働率の低下や集客力の悪化などの「収益性の低迷」が先に表れ、それが資産価値の毀損等に繋がります。

収益性の低迷の原因

  • 市場の読み誤り
  • 限界利益率の低下(価格競争に巻き込まれるなど)
  • 需要の落ち込み
  • 原料価格の高騰

 

事業再生に至るまでのイメージ

選択と集中

「収益性の低迷」を短期間で解消することは困難です。中長期的な視野に立ち、競争力を維持しつつ改善努力できるかがポイントとなります。場合によっては事業の縮小や撤退を判断することも必要です。

経営不振の原因は、収益性の低迷と示唆案価値の毀損が、互いに結びついており事業と財務の両面から再構築を図る必要があります。

事業再構築

選択と集中」が大きな骨格となります。重点事業分野ではないノンコア事業からの撤退により過剰な設備と人員の削減、それに伴う退職金制度の見直しなどを行います。

財務再構築

財務の再構築には外部機関の協力が必要となります。債務のリスケジュール、債務免除、DDS、DESなどの手法も含まれます。

中小企業は単一事業を営んでいることが多く、大企業と異なり、事業分野における「選択と集中」を大胆に行うことが困難になります。

また経営者自身がオーナーであること、直接金融の手段がなく金融機関からの借入金調達が主体であることから、事業と財務のモニタリングが金融機関のみにとなることから金融機関からの支援が重要となります。

つまり中小企業の事業再生については、手法の選択肢が狭いこと、企業自身からの再生着手が遅れがちになること、の2点に注意し金融機関からの支援を伴う「早期着手」が特に重要になります。

 

早期着手と迅速処理の重要性

事業再生は事業運営上に何か問題が認識されたときに、すぐに「内外の人材を活用して解決を試みる」というリスク管理プロセスの延長線上にあります。経営不振企業は新製品開発の遅れ・保有技術の陳腐化・過剰設備投資・事業投資意思決定の失敗・企業不祥事の発生によるブランドイメージの毀損といった問題に対して、リスク管理プロセスが十分に機能しなかったことにより、売上減少・利益減少・不良資産増加・資金繰り悪化・過剰債務状態といった症状が表出してきます。

早い段階で再生に着手することで、各ステークホルダーからの協力が得やすい、様々な再生ツールの選択・活用が可能になります。早期着手により事業再生が成功する可能性が高くなります。

キャッシュフロー経営

事業再生の取組のなかで、企業の経営管理指標として「キャッシュフロー関連指標」を活用します。

キャッシュフローとは「本業からどれだけのキャッシュを稼いだか」「設備投資や運転資金にいくら使ったのか」「税金・利息はいくらか」「借入金の増減」などという資金の流れのことを指します。

代表的な経営管理指標

収益性
  • 将来予測評価…IRR、NPV
  • 過去実績評価…EVA、CFROA、EBITDA、FCF
安全性
成長性

早期着手という観点からは、過去の業績評価指標が重要です。過去からの傾向値を捉えて原因を追求し対策を講じる必要があります。

 

再生のフレームワーク

収益性の回復

売上の増加(or減少のストップ)、費用の削減による利益の回復を図ります。これによりキャッシュフローの改善に取り組みます。

短期的には自社製品の競争力や収益性を分析し、採算性の低い製品についてはラインナップを絞り込みします。長期的にはマーケティング戦略を再度点検し、開発・製造・販売・流通・回収といった事業サイクルにおける体制強化のための管理体制と教育を徹底していきます。

費用のコントロール

損益分岐点分析により変動費と固定費を分析します。同業者のデータを参考にし、時系列のデータを持って動態的に分析することが重要です。

事業再編

損益改善・キャッシュフロー改善努力にも関わらず、十分な回復ができず、より大胆な改革が必要になった場合に事業再編(遊休不動産の売却、共同事業の統合、M&Aなど)を検討していきます。

事業再編のステップ

まずは事業の適切な分類と事業価値の評価を行います。切り出された各事業について、現在の投下資本と今後の投下予定資本、創出されるキャッシュフローから合理的な事業価値を算出していきます。。

どの事業をコア事業・ノンコア事業とするかを決定し、コア・ノンコア事業の中でさらに複数の事業分野がある場合は成長分野・成熟分野・衰退分野・可能性分野に分類します。分類された各事業について事業間のシナジー効果も考えながら、企業価値を最大化するための事業の選択と集中を判断します。

資源を集中する分野においては事業統合・新規資金調達をし、縮小・撤退をする分野については各種M&Aを比較して再生方針に最も合致した手法を選択します。

 

再編後の事業運営を成功させるためには、戦略と戦術を明確にし準備を進めることが重要です。単に不採算部門を切り離す会社分割をしても、本業の収益が悪い場合にはこれを回復させるための再建計画がなければ本来の再生の目的は到底到達には至りません。

 

民間金融機関の無利息型融資に変わる新制度「伴走」スタート! その内容とは?

新型コロナ感染症による経済への影響が出ている中で、昨年から始まった民間金融機関による無利息型融資は令和3年3月31日受付分をもって終了しました。しかしながら依然として新型コロナウイルス感染症は事業活動に大きな影響を与えています。

今まで民間金融機関による無利息型融資は保証協会付融資として信用保証協会の保証を受けていました。東京信用保証協会では無利息型融資に続く融資商品として「伴走全国」「伴走対応」「経営サポート(都改サポ感染)」「事業転換・業態転換(事業・業態転換)」をリリースしました。

今回はこの新たな4つのコロナ融資制度から特に利用がしやすいと考える「伴走全国」「伴走対応」について解説していきます。

 伴走全国

融資上限:4,000万円

資金使途:運転・設備(既存債務の借換も可能

期間:10年以内(元金据置は5年以内)

金利:融資期間 3 年以内    1.7%以内
        3年超 5年以内   1.8%以内

        5年超 7年以内   2.0%以内

                             7年超10年以内  2.2%以内

金利については保証協会の保証割合が100%である場合は0.2%下がる可能性あり。

信用保証料なし

セーフティネット4号・5号・危機関連保証に関する市区町村の認定経営行動計画書が必要

 

伴走対応

融資上限:2億4千万円

資金使途:運転・設備(既存債務の借換は不可

期間:10年以内(元金据置は5年以内)

金利:融資期間 3 年以内    1.7%以内
        3年超 5年以内   1.8%以内

        5年超 7年以内   2.0%以内

                             7年超10年以内  2.2%以内

金利については保証協会の保証割合が100%である場合は0.2%下がる可能性あり。

信用保証料4,000万円以下は負担なし

      4,000万円超部分は1/4負担

セーフティネット4号・5号・危機関連保証に関する市区町村の認定経営行動計画書が必要

 

セーフティネットの取得と事業計画書の作成が必要

無利息型のコロナ融資に代わる商品がこの「伴走全国」「伴走対応」です。特徴は保証協会へ支払う信用保証料は国や東京都の全額補助により事業者負担がない、もしくは1/4と負担が少ないことです。融資期間も最長で10年、返済方法についても元金据置が5年まで使用できる点は、無利息型のコロナ融資の内容を引き継いでいるように感じます。

コロナ融資と同じように伴走全国・伴走対応ともに自治体のセーフティネットを取得する必要があります。セーフティネットの概要についてはこちらを参考にしてください。

www.magta.net

www.magta.net

また伴走全国・伴走対応は申請時に「経営行動計画書」という事業計画書の提出が求められます。事業計画書といってもA3で1枚のシンプルなものです。 この計画書も作成しておくと話がスムースかもしれません。

記入例:https://www.cgc-tokyo.or.jp/download/cgc_keieikoudokeikakusho_kinyurei_2021-4.pdf

 

伴走全国と伴走対応の使い分け

 ここまで伴走全国と伴走対応の内容について見てきました。どちらも大きな違いは無いように感じます。伴走全国は融資上限が4,000万円であるため、仮に5,000万円の申請をすると伴走全国で4,000万円、伴走対応1,000万円のように2本立てとなるようです。

伴走対応の商品目的にも「伴走全国の融資限度額の範囲では必要な資金調達額を賄うことができない中小事業者の資金繰りの円滑化を図る」と記載があります。信用保証料の観点からもまずは伴走全国から利用するのがいいのではないかと考えます。

 

企業の思い切った事業再構築を支援! 中小企業等事業再構築促進事業

 

令和2年度3次補正予算において実施が予定されている補助金があります。

その名も「事業再構築補助金

ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業の思い切った事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。

↓↓リーフレット↓↓

https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/jigyo_saikoutiku.pdf?0326

 

 

申請要件

・売上が減っている(申請前の直近6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高がコロナ以前の同3ヶ月と比較して10%以上減少)

・事業再構築へ取り組む(事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換)

・認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する(補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3%、グローバルV字回復枠は5%以上増加、または従業員1人あたり付加価値額の年率平均3%、グローバルV字回復枠は5%以上増加の達成を見込む事業計画を策定)

 

付加価値とは?

一般的には「営業利益+減価償却費+人件費」

設備投資を実施すると減価償却費が増加するため、景気回復や新規事業で売上が増加すれば達成できる可能性がある。

 

補助額・補助率

中小企業

・通常枠:補助額100万円〜6,000万円 補助率2/3

・卒業枠:補助額6,000万円〜1億円 補助率2/3

中堅企業

・通常枠:補助額100万円〜8,000万円 補助率2/3

・グローバルV字回復枠:補助額8,000万円超〜1億円 補助率1/2

 

補助対象経費

補助金は基本的に設備投資を対象とするもの。設備費、建物建設費、改修費、撤去費、システム購入費も対象。

新しい事業開始に必要となる研修費、広告宣伝費、販売促進費も対象。

 

事業計画の策定が必要

補助金には審査があります。補助金の審査は事業計画をもとに行われるため、採択されるには合理的で説得力のある事業計画が必要となります。

事業計画は認定経営革新等支援機関と相談しつつ進めていくのがオススメです。事業実施段階でのアドバイスやフォローアップが期待できます。

 

事業計画に含めるべきポイント

・事業内容、強みや弱み、機会や脅威、事業環境、事業再構築の必要性

・事業再構築の具体的内容(製品、サービス、導入する設備など)

・新事業の市場状況、自社の優位性、課題やリスクとその克服方法

・実施体制、スケジュール、資金計画、収益計画

 

事務局HP・公募要領

↓↓事業再構築補助金事務局HP↓↓

 

jigyou-saikouchiku.jp

 

↓↓公募要領↓↓

https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/koubo001.pdf

 

コロナウイルスが依然として猛威を振るっている中で、今後の事業運営について展開をご検討している経営者の方も少なくないのではないかと思います。

さまざまなことにチャレンジしたくても、どうしても先に投資費用が必要となります。そのような場合にはこのような補助金も活用してみてはいかがでしょうか。

 

 

事業引き継ぎ支援センター

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事業承継が企業の課題として増えているなかで、前回は東京都の取り組みでる「地域金融機関による事業承継」をご紹介しました。

 

magutann.hatenablog.com

 

今回は経済産業省が実施している「事業引き継ぎ支援センター」についてご案内します。

 

 

事業引継ぎ支援センターとは

国(経済産業省)が実施している機関で後継者がいない会社を引き継いでくれる会社を探す手伝いをしてくれる機関です。第3者承継支援(M&A)や親族承継、従業員承継の情報提供やアドバイス、各種支援機関の紹介業務を行なっています。特にM&Aの場合には課題の見える化、M&A支援会社や金融機関、専門家(士業等)の紹介を行います。

「企業同士のお見合いの場を提供するような機関」というイメージです。

民間のM&A仲介会社や金融機関では取り組めないような小規模案件や、公平中立な立場からの客観的なアドバイスセカンドオピニオン)が必要な場合にも活用できます。

 

 

事業引継ぎ支援センターの活用方法

当該期間は事業承継対策が未着手の企業でも相談ができます。「事業承継といっても何から始めていいかわからない」や「承継の方法や手続きを知りたい」といった、”事業承継の入口“の相談も受け付けています。

「自社を他の企業へ譲渡や売却をしたい」や「他者を譲受、買収したい」といったM&Aの相談も受けています。事業引継ぎ支援センターは全国48カ所に設置されているため全国のセンターと情報共有が可能です。地域に限定されない情報が手に入るというのも特徴の一つです。

 

 

まとめ

  • 事業引継ぎ支援センターは国が運営する機関で、無料で相談できる
  • 相談内容は事業承継やM&A(売却や買収)など
  • 支援内容は直接支援や支援機関の紹介

 

民間のM&A仲介業者と違って、当該センターが積極的に買収先を探したりすることはないようです。

喫緊ではないが事業承継について漠然とした課題を見える化したり、M&Aの話が出た時のセカンドオピニオンとして活用するのがいいのではないかと思います。

 

経営のバトンタッチってどうするの? 地域金融機関による事業承継促進事業を活用してみては?

最近は人口減少に伴い、事業所の数も減少傾向が続いています。

これに大きな危機感をもっているのが地方銀行や信用金庫等の地域金融機関です。最近は低金利によって本来の金利収入が低下していたり、フィンテック企業の躍進により聖域と言われていた預金や為替による収益も減少しております。この状況で人口減少や事業所減少となってしまうと、地域経済が縮小するどころか成り立たなくなってしまう状況です。

「この状況を放置しておくのはマズい」ということで東京都は「地域金融機関による事業承継促進事業」なるものを開始しました。

 

 

事業の目的

「地域金融機関による事業承継促進事業」は、地域金融機関が事業承継に係る啓発から計画の策定、資金供給までの支援を一気通貫でサポートします。そうすることで、地域経済において大きな役割を果たす中小企業が保有する技術や人材の次世代への引継ぎを促進することを目的としています。

 

事業承継問題

東京都の中小企業数(法人+個人事業主)の数は

2009年:487,729社

2016年:413,408社

となっており、74,321社が減少しています。

平成31年度版中小企業白書付属統計資料より

 

事業承継とは、「現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ」を行うことで、企業がこれまで培ってきた様々な財産(人・物・金・知的財産など)を上手に引継ぎ、承継後の経営を安定させるために重要な行為となります。

しかし依然として事業承継が進まないのにはいくつか理由があると考えられています。

 

経営者側の事情

会社の先行きに不安があり、承継に消極的

いつかは必要だが「まだまだできる」と考えており、具体的行動には移していない(創業者に多いケース)

後継者は候補はいるが、まだ任せられない

金融機関に相談すると追加融資が断られるのではないかと心配

事業承継セミナーに行くと、事業存続について取引先等から懐疑的に思われてしまうか心配

後継者候補がいない

 

後継者側の事情

自分から言い出すのは遠慮があり心苦しい

他社に就職していて稼業には戻れない

 

構造的課題

相続税贈与税など税制負担

融資に対して個人保証や個人財産を担保設定している

 

上記以外にも企業によってさまざまな理由があると思います。

よく耳にする「人・物・金」を事業承継に当てはめると「後継者・設備や不動産・資金や自社株式」と考えられます。この部分についてはイメージが持ちやすいかと思います。確かにこの「人・物・金」の承継もとても大切です。

しかしこれらと同じくらい大切な経営資産も存在します。それは「経営理念・特許やノウハウ・熟練工の匠の技・社長の人脈・顧客情報」といった目に見えにくい資産(強み)です。この部分を専門家により「見えにくい資産」を「見える化」するのが本事業の目的の一つです。

 

 

支援イメージ

この事業運営のゴールは事業承継計画の策定とされています。

1企業最大で8回まで、中小企業診断士公認会計士などの専門家を派遣することができます。承継計画策定のなかで、販路拡大や販促支援等の事業承継以外のニーズが高まることも想定し、他の支援機関との連携も図っていきます。

 

支援イメージ

初回:ヒアリングシートをもとに経営全般に冠する課題のヒアリング

2回目:優先順位を決めて方向性を定める

3〜6回目:事業承継計画策定支援実施

7回目:代表者が策定した事業承継計画書の確認

8回目:事業承継計画書の最終決定

 

 

 

活用のメリット

1.会社の5年後、10年後が把握できる

2.将来を見据えた事業承継計画が完成することで、資金調達計画の時期を金融機関と共有できる

3.後継者との時間軸の共有ができる

4.取引先も安心させることができる

5.専門家支援を8回まで無料で受けられる

6.従業員やその家族の将来を一緒に考えることで、従業員満足どが高まる

 

 

事業承継は会社を存続させるためには必ず必要になります。そしてこの準備については、入念に準備していて損はないでしょう。

普段から顧問の税理士等に相談している事業者の方もセカンドオピニオンのような位置付けで、話を聞くだけも新たな発見があるかもしれません。

自身ではなかなか踏み出しきれなかったり、どこから手をつけていいかわからないという方は、この制度を活用してみてはいかがでしょうか。

『財務3表実践活用法』を読みました!感想と活かせそうなポイント!

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「財務に強いビジネスパーソンになりたい!」と思って始めた財務3表シリーズの読み進め。3部作の最終作『財務3表実践活用法』を読み終えました。本作では実践活用法というだけあって、財務諸表を実際の経営に活かす具体的な方法が多く詰まっていました。

今回はその『財務3表実践活用法』を読んだ感想と、活かせそうなポイントをまとめてみました!

過去のシリーズは以下からどうぞ

 

www.magta.net

 

 

www.magta.net

 

 

なぜ読もうと思ったのか

1.財務3表シリーズを2作読んで最後の作品も気になっていた

2.より実務に活かせそうな内容が知りたかった

3.財務3表の実際の活用法を知りたかった

過去の2作『財務3表一体理解法』『財務3表図解分析法』を読んだことで、財務や会計について、以前と比べかなり詳しくなれた気がします。しかし「見て、理解することはできるが、実際にはどう活かしたらいいの?」という疑問もありました。僕が目指すイケリーマンのイメージはバリバリ行動し結果も残していくようなビジネスパーソン。知識を習得することは大事だが、頭でっかちで活かせなくてはもったいない。「せっかく学んだことを活かせるようになりたい!」という願望に答えてくれたのがこの本でした!

 

この本を一言で表すと

「会計技術を駆使してビジネスセンスを磨け」

日本と海外のビジネスエリートを比較すると圧倒的に会計分野における知識量に差があるようです。日本のビジネスパーソンはPL、つまり”売上”と”利益”を見るだけなのに対し、海外のビジネスエリートはPLだけでなくBSやCS見ながら、常に事業全体を視野に入れて仕事をしているようです。

経済が今以上にグローバル化していくことが予想される中で、会計技術を駆使ししてビジネスの現場に活かしていくことが今後のビジネスパーソンには求められていきます。

 

『財務3表実践活用法』ポイント3つ!

  • 予算から事業をコントロールしろ
  • 利益と現金の違いを認識しろ
  • 投資とリターンを常に意識しろ

 

1.予算から事業をコントロールしろ

事業経営には予算策定が必要です。僕の会社でも予算が割り当てられていきますし、予算を策定している会社は少なくないはずです。

なぜ予算が必要なのか?

企業を”生き物”として捉えると、論理だけでは全て証明することができず、予期せぬことも起こります。この変化する複雑系の社会だからこそ目標が必要になります。目標を設定することで方向性を定め、目標との差異が出たらその差異を分析してフィードバック管理を行うことができるようになります。

予算策定のスタートは「最大の制約要因のもとで期待できる売上高はいくらか?」という問いからスタートし下記のように論理的に進めていきます。

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予算をつくり実行すれば何かしらの成果が表れます。この成果は必ず予算とは異なるはずです。そこで「なぜ実績が予算と異なったのか」という差異分析を行います。予算を立てて実行した結果を分析し、フィードバック・コントロールを効かせて軌道修正をします。これがPDCAの実践となります。

 

2.利益と現金の違いを認識しろ

利益とはあくまでも会計上のルールに従って計算された数字でしかありません。そのため赤字だからといいて会社がすぐに倒産してしまうことはなく、永久に資金援助してくれるパトロンがいれば会社が潰れることはありません。会社が倒産するのはキャッシュが回らなくなった時です。現金は動かしようのない現実ですが、利益は会計上のルールで計算された数字でしかないのです。

意図的にこの利益を操作することもできます。例えば売掛金による売上を増やすことで利益を増加せることができますが、その売掛金が本当に発生しているものかどうかは財務諸表からはわかりません。しかし「利益が出ているのにCSの営業キャッシュフローがマイナスになっている」場合などは合理的な理由を確認する必要があります。

全ての取引はいずれ現金勘定となります。現金こそが事実であり実態なのです。

 

3.投資とリターンを常に意識しろ

ビジネスにおいて売上と利益より大切なのが「投資とリターン」です。日々の事業活動と投資活動の違いは、投資は一度意思決定をすると途中での方向転換が困難ということです。だからこそ投資は慎重に行う必要があります。

では投資評価はどのように考えるのでしょうか。当然に投資評価も「投資とリターン」の関係で行うのですが、投資評価の際の「リターン」は利益ではなく元気収支を意味するのが一般的です。それは投資案件のような長い期間の効果を考える場合には、人為的に区切られた会計期間で考えるのではなく現金の動きで考えても良いのです(但し法人税は考慮する必要もあります)。

実際に投資評価を行う際に「現在価値」という考えが重要になります。現在価値とは「現在の100万円の価値は、1年後の100万円の価値とは違う」ということです。

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現在手元に100万円があり、それを定期預金に預けたとします。年利が1%だとすると、現在の100万円は1年後の105万円と同等の価値があることになります。同じように1年後の100万円を現在の価値に直すと95万2千円となります。

これから具体的な投資案件の比較をしていきます

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どの案も初年度に100万円の投資をするため、年度「0」が-100となっています。

A案:毎年5万円ずつ入金。5年目に105万円が入金

B案:毎年25万円の入金が5年間継続。

C案:1年目に50万円、2年目に25万円というように期が早いうちに比較的大きなリターンが期待できるもの。

これら3つの投資案件はどれも100万円を投資して、5年間合計で125万円のリターンがあります。これらの投資案件をどのように評価していくべきか見ていきましょう。

多くの企業が投資評価に使っている「回収期間法」(この例の場合、100万円の投資を回収するのにどのくらいの期間を要するかというもの。回収期間が短いほど高効率とされる)で見てみると、B,Cは4年。Aは5年となります。よってA案よりもB,C案の方が効率が良いと言えます。

では回収期間が同じB案とC案は同じ価値の投資案件と言えるのでしょうか。ここで上記で説明した「現在価値」を使います。この現在価値という考え方を使った投資評価の方法にIRR(Internal Rate of Return 日本語で内部収益率)という考え方があります。IRRは投資額とその投資に伴うリターンの現在価値の総額が同じになる利率を計算して求めるもので、投資案件の利率のようなものです。

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 IRRを用いればリターンの総額も回数期間も同じだった投資案件BとCですが、実はC案の方が効率の良い投資であるということがわかります。

 

 

感想

財務3表シリーズを読んでみて、読む前と後では財務諸表に対する考えが大きく変わりました。以前は「売り上げはこの程度で、利益はこのくらいか」といったように財務諸表が表すほんの一部しか見ていませんでしたが、このシリーズを通してPLだけでなくBS、CSの大切さや示している数字の意味が理解できるようになりました。

また本書ではM&Aにおける企業価値の算出方法など、注目されている金融分野での解説もあり今後さらに活用する場面が増えそうです。

あとは行動するのみ!しっかりと実践で活かして自分の力にできるよう頑張っていきます!

 

 

内容

「理解」から「分析」、そして「実践活用」へ。累計50万部突破、「財務3表シリーズ」の第3弾がついに刊行! ! 決算書は「企業経営の成績書」といわれるが、実は過去を振り返るだけでなく、ビジネスの構造や将来を考える材料としても使える。経営者の意思をつかむ、事業再生を考える、予算をコントロールする……。ビジネスのあらゆる場面で財務3表が活用できて、あなたの会社の事業で即、使える! ビジネスマン必読。

Amazonより

 

著者紹介

國貞/克則
1961年生まれ。83年東北大学工学部卒業後、神戸製鋼所入社。海外プラント輸出、人事などを経て、2001年に独立。経営コンサルティングを行いながら、会計研修のオリジナル・プログラムを開発した

 Amazonより

 

 

『財務3表図解分析法』を読みました! 感想と活かせそうなポイント!

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先日『財務3表一体理解法』に関する記事を投稿させていただきました。読んでくださった方々は本当にありがとうございます。この財務3表シリーズは、『財務3表一体理解法』『財務3表図解分析法』『財務3表実践活用法』の3冊でひとつとなっています。

まだシリーズ1作目の『財務3表一体理解法』をお読みになっていない方は、こちらが参考になれば幸いです。

 

www.magta.net

 

今回は第2作目となる『財務3表図解分析法』を読みましたので、何か皆様の参考になればと思い感想等を交えながら書いていきます。

 

 

なぜ読もうと思ったのか?

  1. 『財務3表一体理解法』が面白く勉強になったから
  2. 有名企業を題材にしていてイメージが掴みたかった。
  3. より踏み込んだ財務の勉強がしたかった。

前作『財務3表一体理解法』を読んでからより財務というものに興味を持つようになりました。その理由はなにより前作が面白く勉強になったからです。そのまま「もっと勉強したい」と興味を持つようになり本書を手に取りました。本書ではトヨタソフトバンクといった超有名企業を事例に取り上げており、普段テレビCMのイメージだけではわからない、数字で捉えた実態の姿を学ぶことができました。「図解分析」ということもあり、脳内で決算数字を図解に変換しイメージすることが以前よりスムーズになった気がします。

 

この本を一言であらわすと?

「デジタルデータをアナログ変換しろ」

人間は数字の羅列であるデジタルデータより、データを図にしたアナログデータの方が、沢山の情報を瞬時に直感的に読み取ることができます。財務にしても財務分析指標(流動比率固定長期適合率など)の計算式を文字列で羅列して書かれても、特に馴染みのない人は理解するのが大変ですが、図で見ることでその意味を瞬時に理解することができます。

 

『財務3表図解分析法』ポイント3つ!

  • 「デュポン・モデル」をベースに考えろ
  • キャッシュフロー分析から経営戦略を読み取れ
  • 財務諸表の限界を知っておけ

 

1.「デュポン・モデル」をベースに考えろ

社長には、事業全体のプロセスを効率よく運営することが求められます。これを評価する指標がROEと言われるものです。事業全体の効率を表すROEの数値は、財務レバレッジ総資本回転率当期純利益というそれぞれのフェーズの分析結果を掛け合わせることで決まります。

そのROEと関係しているのが「デュポン・モデル」です。デュポン・モデルとは1920年代にアメリカの化学会社DuPontが導入した業績管理手法の考え方です。ROEを算出するためのそれぞれのフェーズの数値を意識して見ていくことで、分析対象会社がどのフェーズをいかに効率よく経営しているかがわかります。

事業全体を「資産を取得するため資金を調達する」「資産を売上に変える」「売上を利益に変える」の3つのフェーズに分割します。

「資産を取得するために資金を調達する」とは資本金などの自己資本のほかに借入金などの他人資本をどのくらいの割合で使用しているかということを分析します。これは「財務レバレッジ」という指標で分析できます。

財務レバレッジ=総資本÷自己資本です。

「資産を売上に変える」とは調達した資産をいかに効率よく使って売上を上げているかということで「総資本回転率」という指標で分析できます。

総資本回転率=売上高÷総資本です。

「売上を利益に変える」とは売上高をいかに効率よく利益に変えているかということで「当期純利益率」という指標で判断できます。

当期純利益率=当期純利益÷売上高×100で求められます。

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ROE、財務レバレッジ総資本回転率当期純利益率をチェックすることでザックリと会社の状態が分析できるのです。

ここまでのプロセスをPLとBSの図を用いて表すと、資本主義社会の仕組みが見えてきます。

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自己資本で事業を始めるのではなく、金融機関から借入等を行い資本を集めるとします。このように自己資本に対しどのくらいの割合で他人資本を使っているのかを表すのが財務レバレッジです。

②次に調達した資産を使って売り上げを上げます。この総資本と売上高の比が総資本回転率です。

③この売上高を当期純利益に変えていくのが当期純利益率です。

最終的にはこの当期純利益がBSの利益剰余金に積み上がり株主の自己資本を増やしていくことになります。つまり資本主義社会とは、株主の資本金を元手に事業が始まり、他人の資本を使い事業を行い、その事業によって生み出された利益が株主の自己資本を増やしていくという構造なのです。

事業全体の効率を評価するROEは、「財務レバレッジ」「総資本回転率」「当期純利益率」の掛け算で算出できます。

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ここまで説明してきた事業の3つのフェーズを見ていき分析対象会社がどのフェーズをいかに効率よく経営しているかを分析することが大切になります。各プロセスを評価する場合に一般的に総資本回転率当期純利益率は高い方がいいとされますが、財務レバレッジだけは高いからいい、低いから悪いということではありません。財務レバレッジは良しあしではなく、事業経営の姿勢や方向性を表している指標なのです。

 

2.キャッシュフロー分析から経営戦略を読み取れ

キャッシュフロー計算書(CS)は毎年会社が何からキャッシュ(現金)を得て、それを何に使ったかが一目瞭然になる表です。CSを見れば会社がどんな状況にあるか、経営者が何を考えているかがわかります。

CSは現金の出入りを表す収支計算書です。それが「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分かれています。従ってこれら3つの欄がそれぞれ、現金が増えてる場合は(+)と現金が減っている場合(-)に分かれます。この(+)と(-)の組み合わせは下記図のように8通りのパターンがあります。

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下の図は三菱自動車の2016年3月期におけるCSの投資CFと財務CFの抜粋です。

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表の上の方にある「有形固定資産の取得による支出」の欄を見てください。

前期:856億円、当期:690億円です。

当社は毎年600億円〜900億円程度の設備投資を行なっております。ただ当期は「有形固定資産の取得による支出」とほぼ同額の「有形固定資産の売却による収入」が640億円計上されており、投資CFの総額は例年に比べ少なくなっています。

財務CFに目を向けてみると、短期借入金や長期借入金の返済で多額の支出となっています。過去5年間のCSを見てもほぼ一貫して借入期の返済を続けています。その結果が下の図です。

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三菱自動車は借入金を減らし、自己資本比率の高い財務的に安定した企業にすることが経営上の大きな方針であったことが分かります。

 

3.財務諸表の限界を知っておけ

私たち会計の素人が財務諸表から読み取れることには限界があります。例えば大企業の各事業部がどういう戦略で戦っているか、これから戦おうとしているのかはわかりません。

また対象企業の将来を予測することもできません。2000年代初頭のスバルとシャープの評価は、現在とは真逆でした。自動車業界一人負けのスバルに対し、電機業界トップクラスの営業利益率を誇る超優良企業のシャープでした。その状況が今では現時点では完全に逆転しています。しかしこれから両社がどうなっていくかは誰にもわかりません。

不正会計や粉飾を財務諸表から見抜くのも困難です。こういう場合は財務諸表になる前の、数字の認識や評価の前提によって行われます。例えば在庫や売掛金架空積み増しによる利益操作などは、在庫や売掛金が本当に存在するかどうかを確かめようとすると、実際の在庫や資料を確認したり売掛先企業に直接確認しなくてはなりません。

財務諸表とは「企業の全てがわか」わけではありません。そのような前提に立ったうえで財務諸表を見てみると、対象企業に関して知らなかった情報が想像以上に得られることもあるのです。「どのようなことで稼いでいるのか」「現在の財務状態は良好なのか」「経営者は何を考えて経営をしているのか」など企業に対して漠然と持っているイメージだけではわからない、企業経営に関する具体的な情報が財務諸表にから読み取れるのです。

 

感想

 前回読んだ『財務3表一体理解法』に続き読んだ本作でしたが、実際の企業を多くモデルにしていることもあり、読み進めていくうちにその企業にたいするイメージが変わりました。

BSの形をよりビジュアル的に捉えやすくなっており、より財務を図で考えられるようになったと感じます。またCSについての説明も前作より多く盛り込まれており、前作ではなかなかイメージの難しかった部分についても理解を深めることができました。

引き続き3作目を読んでいる最中なので、読み終えたらこちらにまとめていきたいと思います。

 

内容

ベストセラー『財務3表一体分析法』の全面改訂版。
財務3表を図解したオリジナル図はそのままだが、
取り上げる会社を見直し、数字は最新決算に一新!
財務データの中でも、キャッシュフロー計算書の読み解き方が出色。
財務3表を図式化すれば、経営状態が手に取るようにわかる!ベストセラー『財務3表一体分析法』を全面改訂。貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)をオリジナル図にし、キャッシュフロー計算書(CS)から経営者の意思を読む。「期間比較」や「同業他社比較」など多角的な分析法を紹介、グローバル時代に合わせて超巨大多国籍企業も俎上に載せる。『増補改訂財務3表一体理解法』との併読がおすすめ。初読者も既読者も、そしてすべてのビジネスマン必読!

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著者紹介

國貞/克則
1961年岡山県生まれ。東北大学機械工学科卒業後、神戸製鋼所入社。海外プラント建設事業部、人事部、鉄鋼海外事業企画部、建設機械事業部などで業務に従事。1996年米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータコーポレーションを設立。日経ビジネススクールなどで公開セミナーやeラーニングの講座を担当している

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