Googleは「Project Oxygen」というリサーチプロジェクトによって「優れた上司の条件」を突き止めました。
詳細はこちらをご参照ください。
その後Googleでは「効果的なチームの特徴」を明らかにするためにリサーチを実施しました。このプロジェクトの目的は「効果的なチームを可能とする条件は何か」という問いに答えを見つけ出すことでした。
私もチームパフォーマンスを向上させるために、日々悩んでいます…。答えが明確でない”人”の集まりがチーム、どのようにマネジメントしていくべきか、迷路を彷徨っているような感覚です。
進むべき方向の道標となるヒントが、Googleの調査から得られればと思います。
- 「チーム」とは何かを定義する
- 「効果的なチーム」とは何かを定義する
- 効果的なチームで重要視されていた5つの力学
- パフォーマンスにそれほど影響がなかったこと
- 心理的安全性を高めることが重要
- パフォーマンス向上に向けた取り組み
「チーム」とは何かを定義する
まずはじめに「チームとは何か」を明確にする必要がありました。Googleは最も根本的なレベルとして「ワークグループ」と「チーム」の区別を試みました。
ワークグループ
相互依存性が最小限という特徴があり、組織または管理上の階層関係に基づいている。ワークグループのメンバーは、情報交換のために定期的に集まる場合があります。
チーム
メンバーは相互に強く依存しながら、特定のプロジェクトを遂行するために、作業内容を計画し、問題を解決し、意思決定を下し、進捗状況を確認します。チームのメンバーは作業を行うためにお互いを必要とします。
「効果的なチーム」とは何かを定義する
「効果的なチーム」とはどういうものか?をはっきりとさせるために、Googleは下記の4つの指標を組み合わせ、チームの効果性を総合的かつ的確に把握するように調査を行いました。
- マネージャーによるチームの評価
- チームリーダーによるチームの評価
- チームメンバーによるチームの評価
- 四半期ごとの売上ノルマに対する成績
効果的なチームで重要視されていた5つの力学
調査の結果、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」でした。チームの効果性に影響する5つの力学を見ていきます。
1.心理的安全性
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取った時の結果に対する個人のん認知の仕方です。「無知・無能・ネガティブ・邪魔などと思われる可能性のある行動をしてもこのチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味しています。心理的安全性の高いチームは他のチームと比べて、リスクを取ることに不安を感じない、自分の過ちを認める、質問する、新しいアイデアを披露するなど、仕事に対して意欲的チャレンジをしても、誰も自分をバカにしたり罰したりしないということが信じられる余地があります。
チームからの意見やアイデアを求めたり、個人的な仕事の進め方の好みをチームメンバー内で共有することで、構築されていきます。
2.相互信頼
相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げることがわかりました。これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁する傾向にあるようです。
各チームメンバーの役割を責任を明確にする、仕事に透明性をもたらす具体的なプロジェクト計画の策定などが具体的なアクションとなっています。
3.構造と明確さ
効果的なチームを作るには、職務上で要求されていることを、「その要求を満たすためのプロセス」、「メンバーの行動がもたらす成果」について、個々のメンバーが理解していることが重要になります。目標は個人レベルで設定することも、グループレベルで設定することもできますが、具体的で取組がいあり、なおかつ達成可能な内容でなければなりません。Googleでは短期的な目標と長期的な目標を設定してメンバーに周知するために、「目標と成果指標(OKR)」という手法が広く使われているようです。
具体的には、チームの目標を定期的に周知し、目標達成のための計画をメンバーに理解させます。また、チームでミーティングを開く際には、明確な議題を設定し、リーダーを指名します。
4.仕事の意味
チームの効果性を向上させるためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。
チームメンバーが効果的に行っている取り組みに対して、好意的なフィードバックを提供し、メンバーが議題に直面している場合は手を差し伸べます。誰かが自分を助けてくれた場合には、メンバーの前で感謝の気持を伝えます。
5.インパクト
自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。個人の仕事が組織の目標達成に貢献していることを可視化すると、個人の仕事のインパクトを把握しやすくなります。
各チームメンバーの仕事やチームや組織の目標達成に貢献するような明確なビジョンを共同で策定します。自分やチームの仕事がユーザーや顧客、組織に与える影響をよく考えます。またユーザー目線で物事を評価する仕組みを導入し、ユーザーに焦点を当てることで、インパクトという部分については効果性を発揮できると考えます。
パフォーマンスにそれほど影響がなかったこと
今まではパフォーマンスにいい影響を与えることを書きました。ここでは逆にパフォーマンスの効果性にそれほど影響がなかったことをまとめていきます。
- 働く場所(同じオフィスで近くに座って働くこと)
- 合意に基づく意思決定
- 外交的であること
- 個人のパフォーマンス
- 仕事量
- 先任順位
- チームの規模
- 在職期間
上記内容がGoogleのチームの効果性に大きな影響を与えていなかったことは事実ですが、すべての組織で同様というわけではありません。その点には注意が必要です。
心理的安全性を高めることが重要
Googleが発見した、チームのパフォーマンスを上げる5つの力学のうち、圧倒的に重要なのは心理的安全性です。心理的安全性の高いメンバーは離職率が低く、他者のアイデアをうまく利用でき、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍多いという特徴がありました。
チームの心理的安全性がどの程度のレベルであるかを測る際に、下記のようなことが自分自身にやチームメンバーに当てはまるかを考えます。
- チームの中でミスをすると、非難されるか?
- チームメンバーは、課題や難題を指摘し合えるか?
- 自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがあるか?
- チームに対し、リスクのある行動をしても安全か?
- チームメンバーに助けを求めることは難しいか?
- チームメンバーは、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をするか?
- 自分のスキルと才能が尊重され、生かされていると感じるか?
また、個人でできるチームの心理的安全性を高めるための取り組みに下記のようなことがあります。
- 仕事を実行の機会ではなく、学習の機会と捉える
- 自分が間違えるということを認める
- 好奇心を形にし、積極的に質問する
パフォーマンス向上に向けた取り組み
ここではチームの効果性を生み出し、育み、強化するための取組を紹介していきます。効果的なチームの特徴は組織によって異なりますが、取組を共有するステップとしてGoogleでは以下のことが推奨されています。
共通認識を持つ
組織内で培いたい、「チームが取るべき行動規範」を定義します。
チームの力学について話し合う場を作る
通常は話しにくい話題について、オープンかつ建設的に話し合う場を設けます。
チームの強化と改善にリーダーを巻き込む
リーダーを巻き込むことで、継続的な改善やモデル化を促します。