業種別の財務分析のポイントとして前回は卸・小売業を取り上げました。第2弾は製造業について書いて参ります。
在庫に着目した分析
売上総利益の低下は製品競争力の低下
売上総利益率は製品の競争力を表しているとも言われます。製品自体の競争力が低下すると、今まで通りの価格では販売できなくなるため、販売価格を下げることになり、結果として、粗利が低下します。
棚卸資産回転期間の長期化は製品競争力の低下
在庫の動きは製品の競争力や製造能力の帰結であり、「メーカーとしての本質的な競争力が表れる」との見方があります。
上記の2点に該当する場合には、既存製品の競争力低下は顕著であり、今後の事業を支えるべき付加価値の高い新製品の開発が必要となります。
生産現場との関係性
製造業の場合には、財務分析のみならず生産現場(工場)の生産性の分析も重要となります。
現場の留意点
一般的なポイントは下記のとおりとなります。
- 整理整頓状況
- 材料・仕掛品・製品在庫の多寡・保管状況
- 不良品の量及び管理状況
- 現場行員の作業態度
- ノウハウの蓄積・独自の技術
これに加え、「各製造現場の役割」が明確となっており、「受注上の決め手は何か」、「製造現場の特徴や強みを強化するための具体的な施策は行っているか」といったことも重要になってきます。
企業の事業基盤や生産能力によって、状況は異なるため一概には言えませんが、自社の財務と現場の上記のポイントをチェックした後に、「納期遅れの割合とその原因」や「操業度の変動とそれに対するオペレーション(固定費合理化や労働分配率)」、「不良率の推移と発生原因」などに焦点を当てた分析を行うとより深い分析が可能となります。