まぐ太の金融と経営の扉

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良いマネージャーとは? Googleの最適解「プロジェクトoxygen」に学ぶ


マネージャーの仕事とはどういうものなのでしょうか。

最近、社内で私の昇格人事が検討されているとの話を聞きました。仮に昇格ということになれば、現在のプレーヤー的なポジションからマネージャーのポジションへと変更となります。

今までも役職が変更になったことはありましたが、プレーヤーという大きな枠組みの中での変更であり、働き方自体が変わるという経験は今回が初めてです。

仕事の内容については今までの上司を見ているとなんとなくイメージはつきますが、実際に組織を束ねパフォーマンスを出すことに手法というか考え方とはどのようにすればいいかという部分が曖昧なままです。社内研修もあるということですが、いまいち期待できないというのが本音です…。

そんなことを考えていると、あのGoogleが「良いマネージャーとは、どういう人か?」ということを調査したプロジェクトがあることを思い出しました。その名も「プロジェクトOxygen」。

Googleといえば巨大企業ですが、創業は1998年です。わずか四半世紀で社会のインフラ的なサービスを提供し、人々の生活に欠かせない企業となっています。社員数も10万人超と、世界中に社員を抱えて、様々な組織が混在しています。一気に巨大企業への階段を駆け上がってきた背景には人事面などでも、従業員のパフォーマンスを発揮させたり、組織をうまく持続させていくための、相当な工夫がされていたのではないかと思います。

私が勤める会社とは、社風や一人ひとりの能力はもちろん大きく異なりますが、参考にしてみようと思いました。

プロジェクトOxygenとは?

Googleが2009年に実施した社員を対象とした大規模調査を指します。このプロジェクトでは「優秀なマネージャーとはどういう人物か?」ということを、Googleの社員向けに調査しました。

調査内容は人事効果やフィードバックサーベイ、表彰、その他のリポートなどから、マネージャーに関する1万件に及ぶデータを収集し、仮説と検証を重ねたものです。

 

Googleの答え

優れたマネージャーの行動規範

  1. 良いコーチである
  2. チームにまかせ、マイクロマネジメントはしない
  3. チームの仕事面の成果だけでなく健康を含めた充足に配慮し、インクルーシブ(包括的)なチーム環境をつくる
  4. 生産性が高く、結果を重視する
  5. 効果的なコミュニケーションをする(人の話をよく聞き、情報を共有をする)
  6. キャリア開発をサポートし、パフォーマンスについて話し合う
  7. 明確なビジョンや戦略を持ち、チームと共有する
  8. チームにアドバイスできる専門知識がある
  9. 部門の枠を超えてコラボレーションを行う
  10. 決断力がある

Google re:workより引用

以上がGoogleが導き出した「優れたマネージャーの行動規範」です。しかし「この行動規範がすべての企業に当てはまるとは限らない」ともしています。大切なのは「企業で働く従業員がパフォーマンスを発揮させるためには、どのようなマネージャーが必要だと考えているのか」を特定することです。

確かにこのGoogleの答えが、我社の社風や文化に馴染んでいくかは不透明です。今までこのようなことをする上司はいませんでしたし、聞いたこともない…。ただ「こんな上司がいたらいいな」とも思います。そう思える以上はチャレンジする価値があるかもしれません。まずはやってみて自分なりに試行錯誤を重ね、アレンジしていきたいと思います。

さらにGoogleではこの10個の項目について、掘り下げた研究結果を公開しています。次からは個別項目について見ていきます。

 

行動規範1:良いコーチである

「評価の高いマネージャーは優秀である」ことが求められます。マネージャーが良いコーチとなるには、チームメンバー各々のニーズに焦点を合わせていくことが重要です。そのために必要は手法として以下の項目を上げています。

  • 定期的に1対1ミーティングを行い、チームメンバーの話に耳を傾ける
  • 自分の考え方とチームメンバーの考え方に違いに注意する
  • アクティブ・リスニングを用いて、メンバー自身の洞察を促す
  • 具体的かつタイムリーなフィードバックを行う
  • 意欲を引き出すポジティブなフィードバックと、発展につながるネガティブなフィードバックのバランスをとり、長所と改善点を理解する

GROWモデルによるコーチン

GROWモデルはイギリスで開発された、コーチングのフレームワークです。コーチングのスタイルをメンバーによって柔軟に調整する重要性を強調しています。部下を自発的に考えさせ、行動させるための気付きと学びのサイクルを回していきます。

「Grow」とは下記の4つの頭文字から構成されています。

Goal(目標の明確化):求めるものはなにか

Reality(現状の把握):何が起こっているか

Option(選択肢の検討):何ができるか

Will(意思の確認):何をするか

対象相手に「Grow」を質問を通じて明確に気が付かせることを目的としていて、マネジメントだけでなく、日常的な問題解決のプロセスにも活用できます。

このGROWモデルを用いて、チームメンバーのキャリアについて定期的にディスカッションすることで、チーム全体のパフォーマンスも向上していきます。

Goal:目標の明確化

チームメンバーがキャリア形成の先に見据えているものを特定します。

  • 「1年後、5年後、10年後の自分はどうなっているか?」
  • 「収入や現在のスキルの制約がないとしたら、どのような仕事に着きたいと思うか?」
  • 「興味、価値を置くもの、原動力となっているものは何か?」
Reality:現状の把握

チームメンバーの現在の役割とスキルを理解します。

  • 「現在の業務で最もやりがいを感じること、また、ストレスを感じることは何か?」
  • 「今の仕事はやりがいがあるか?能力を伸ばせているか?どうすればやりがいを感じられるか?やりがいのない業務はなにか?」
  • 自分の長所と短所について、他の人からどのような指摘を受けたことがあるか?」
Option:選択肢の検討

目標と現状のギャップを埋めるための方法を考えます。

  • 「以前話し合った目標達成のためのスキルを磨くために、今できることは何か?」
  • 「自分を伸ばすために、どのような仕事やプロジェクトに挑戦したいか?どのような経験をしたいか?」
Will:意思の確認

現状から目標に向かうための実現可能なステップを特定します。

  • 「何を、いつまでに行うか?」
  • 「役立つリソースは何か?目標達成のために役立つスキルは何か?」

効果的なミーティングの実施

評価の高いマネージャーは頻繁に1対1の個別ミーティングを実施していたようです。面談には相応の時間を要しますが、早い段階で問題を把握し、対応策やフィードバックを行える機会にもなります。

行動規範2:チームに任せ細かく管理しない

効果的なマネージャーは、チームに権限を与え、成長を伸ばすために、下記の4つの行動を取っているようです。

  1. 細かく管理しない
  2. 自由にやらせつつも、必要に応じて助言をする
  3. チームに対する信頼を明確に示す
  4. チームの成果を周囲に伝える

自分がチームのために働いているのであり、チームが自分のために働いているのではないことを、理解している人こそが効果的なマネージャーであると言われています。

適応・状況のアセスメント、コラボレーション

チームメンバーをサポートする際に、深入りしすぎると「細かく管理されている」と感じさせていしまい、緩すぎると失敗に終わります。チームメンバーの成長によってこのバランスは変化していきます。最適なバランスを保つためには、マネージャーとチームメンバーとの話し合いが重要であるとGoogleは考えています。

チームに権限を与え信頼関係を構築する

Googleの調査結果では、評価の高いマネージャーほど、チームに権限を与え細かな管理はしない傾向にあります。Googleでは次のような方法でチームとの信頼関係を構築していくことを勧めています。

  • 意見を求める
  • イデアや知見を求める
  • 肯定的なフィードバックを行い関係を強化する
  • リーダーを育てる
  • 各チームメンバーの能力を伸ばす
  • チームメンバーにコーチングする
  • オープンなコミュニケーションを推奨する
  • チームメンバーへの信頼を示す

上手に任せる

適切なチームメンバーに適切なプロジェクトを任せることは難しい場合もあります。しかし効果的なマネージャーほど権限や責任、意思決定を個人やチームに委ね、仕事を任せる傾向にあるようです。任せる範囲を定め、適切にサポートできるようなポイントとしては下記を挙げています。

  • 目標を見据える(最終目標を達成するにはどうすればいいか、どこを任せられるか)
  • 自身を見つめる(任せられる部分とそうでない部分。自身の得手不得手)
  • 適任者を見出す
  • 委任する
  • 連絡を取り合う(絶えずコミュニケーションをとり確認する)
  • 感謝する

行動規範3:チームの仕事面の成果だけでなく健康を含めた充足に配慮し、インクルーシブ(包括的)なチーム環境をつくる

行動規範6:キャリア開発をサポートし、パフォーマンスについて話し合う

効果的なマネージャーは仕事の面だけでなく、個人的な面においても、メンバーを気にかけていることが明らかになりました。

仕事面ではフィードバックを提供したり、成長する機会を見極めたり、スキル向上に焦点を当てたりしながらチームを作り上げていきます。マネージャーは現在の職務における昇格のみに重点を置くのではなく、同じような影響をもたらす別の機会をも視野に入れるようチームを指導しています。

個人的な面では、マネージャーとしての成功には各チームメンバーのそれぞれの満足感に配慮することが不可欠であるとしています。部下から高く評価されるには、部下への配慮を示し、それを伝える必要があります。

キャリア形成に役立つ話し合いをする

Googleではマネージャーと部下がキャリアについて定期的(4半期に1回など)に話し合うことを推奨しています。その際に次の点について事前に考えておきます。

  • チームメンバーのパフォーマンスと実績
  • メンバーが楽しいと感じる仕事
  • メンバーが得意とする仕事
  • メンバーの現在の仕事
  • 組織がメンバーに求めていること
  • 最も改善するべきエリア
  • キャリア形成に関してメンバーが必要とするサポート
  • 自身の価値を知ってもらうためにできること

GROWモデルを用いた話し合い

キャリアに対するディスカッションについては、先述している「GROWモデル」を用いることで、マネージャーとチームメンバーとの話し合いが円滑になります。

「シンプルな一つの目標」を設定する

従業員の満足度を高めるために「シンプルな1つの目標」を設定しています。チームメンバーがワークライフバランスを保てるような目標を設定し、マネージャーは、各々がその目標を達成できるようサポートします。

共感と思いやりについて理解する

マネージャーがここのチームメンバーに対してそれぞれに対する気遣いを示すことが重要と考えています。そのために相手に対してどのように共感し、思いやりを持てば良いかについて、マネージャーが理解することが大切です。それにはまず、共感と思いやりの違いを知る必要があります。共感とは、「他の人の立場と感情の状態を感じる能力」です。思いやりはもう一歩踏み込んだ感情で、「他の人の不安に共感したうえでそれを和らげたいと思う気持ち」です。

過度な共感は、共感する側にストレスを与えて消耗させる一方、思いやりは気遣い・温かみ・モチベーションとなることがわかっています。

ではマネージャーがどのように思いやりの気持ちを育むかのヒントを次に書いていきます。

  • どのようなサポートが必要かを聞く。求められていることをわかったつもりにならない。
  • チームメンバーとの共通点を探す。
  • チーム内では競うことではなく、協力することを推奨する
  • メンバーに対し、心から関心を持つ
  • 思いやりのある振る舞いを浸透させるために模範を示す。
  • 相手に過度に思い入れることは避け、協会は明確にする

行動規範5:効果的なコミュニケーションをする

行動規範7:明確なビジョンと戦略を持ち、チームと共有する

評価の高いマネージャーの特徴の一つに、ビジョンの設定があります。明確なビジョンを有していることは様々な点で役に立ちます。具体的にはビジョンを有することで、「チームを成功に導くことができる」、「チームメンバーの目指すべき方向性を伝えられる」、「チームがやるべきことを選択する際の判断材料となる」、といった重要な意味を持ちます。

ビジョンを設定し、それを効果的にチームに伝える必要があります。その際は口頭や書面で、明確・簡潔・率直に伝えることがポイントです。

チームとビジョン設定を行う

チームと協力してビジョンを作成するには、どうすればいいのかを考えていきます。

コアバリュー

コアバリューとは、チームの基盤となる信念を意味し、チームのパーパスとミッションとを導き出します。

パーパス

チームの存在理由とチームが組織全体に与える影響です。パーパスが存在しなかった場合にどのような影響があるかを考えます。

ミッション

達成しようとしている目標を表します。

ストラテジー

ミッション達成のために将来にわたって展開する手段を意味し、長期にわたる場合があります。

ゴール

ストラテジーを短期的で達成可能な目標へと落とし込んだものです。チームの取組を一つにまとめる働きがあります。

リフレクティンブ・リスニングを行う

リフレクティング・リスニングでは、相手が表に出した言葉や気持ちを聞き、それを自分の言葉に置き換えて繰り返します。これにより効果的にコミュニケーションが取れるようになります。

ポイントは、「気持ちを受け入れる」、「不明確な点から相手の視点を明確にする」、「受け入れて共感する」です。

フィードバックを行う

マネージャーにとって最も重要で難しいものの一つが、チームメンバーへのフィードバックです。Googleではフィードバックを実施する際に、次の点に考慮しているようです。

  • 質の高いフィードバックを提供する
  • 基準に一貫性を持たせる
  • 思い込みを避ける
  • 自分を正しく理解してもらう

行動規範4:生産性が高く結果を重視する

行動規範8:チームにアドバイスできる専門知識がある

効果的なマネージャーは、チームが具体的な成果を上げられるようにサポートすることを重視しています。マネージャーの重要な役割の1つはチームメンバーに起こりうる障壁を予測し、取り除くようにサポートすることです。

専門スキルを持つマネージャーは、チームメンバーに寄り添い、その力を発揮することで、信頼できるアドバイザーとなります。これにより自らのスキルを向上し続けられると同時に、マネージャーが単なるリーダーではなく、チームのいちメンバーであるという重要なメッセージを伝えることにもなります。

効果的なマネージャーは「自分はチームのために働いている」のであり、その逆では無いことを自覚しています。

結果を重視して、生産性を維持する

効果的なマネージャーがチームの生産性を維持し、結果を出すために行っていることを以下にまとめます。

  • チームに常に結果を重視させる
  • チームによる優先順位をサポートする
  • 障壁を取り除く
  • 誰が何に取り組んでいるかを明確にする
  • 懸命に働き、チームの指針となる

チームと共に働くことで生産性を上げる

マネージャーはチームにとって信頼できるアドバイザーでもあります。その多くが各分野の深い専門知識を備えており、自らの知識を生かしてチームメンバーが創造的な解決策を考え出せるようサポートします。具体的には下記のようなことを行っています。

  • チームの傍らで懸命に働く
  • 問題点を把握する
  • 専門知識とスキルを活かして問題解決をサポートする

チームとともに仕事に取り組むことで、マネージャーは自分の知識をチームに示すことができます。また、自分のスキルアップにも繋がります。そして重要なのは、メンバーの仕事に加わることで、マネージャーが単なるリーダーではなく、チームに参加しているというメッセージを伝えられる点です。マネージャーがチームのために働いている姿を見せ、チームメンバーにその姿を伝えることが大切です。

感想と活かせそうなポイント

ここまでGoogleで重要視されているマネージャーのポイントをまとめてきました。いや〜、これがすべて出来ればスーパーマネージャーになれそうな気がしました。今の私とは次元が違いすぎる…。

前向きに考えれば、その分学ぶべきことや参考にするべきことが多いということですね。マネージャーというポジションになる以上、今までのような個の成績ではなく、チームとしてのパフォーマンスを最大限に発揮できることを心がけるようにします。

ここに書いてあるやり方が、すべての組織に当てはまるわけでは無いので、自分なりに試行錯誤しながら、自分や組織に合ったやり方を作っていきたいと思います。

今回の件を通して、他にもGoogleがどのような取組をしているのか、興味が湧いたので、本なども読んで、こちらでご紹介していければと思いました。

 

より詳しく見てみたい方は、こちらのサイトをご参照ください。

rework.withgoogle.com