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セーフティネット保証とは? 保証協会の別枠をうまく活用する方法

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前回は新型コロナウイルスの影響により、日本経済を支えている中小企業への資金繰り支援策の概要について記載しました。

今回はその中でもセーフティネット保証について詳しくお伝えしたいと思います。

 

セーフティネット保証とは?

経営の安定に支障が生じている中小企業者を、一般保証とは”別枠”の保証の対象とする資金繰り支援制度です。

ざっくりと申し上げると、「非常事態に対応すべき特別融資」といったイメージでいいかと思います。

この”別枠”というのがポイントです。

すでに保証協会付融資を限度額までご利用されている企業でも、既存利用の一般保証枠とは違う枠組みでの捉えとなるため、一般保証枠では保証審査が通らなくても、別枠での申請であれば資金調達の可能性が出てくるというわけです。

※但し必ず利用できるというわけではありません。別枠といえども融資が約束されているものではないのです。あくまでも制度上可能となるだけで、調達した資金がしっかりと返済可能か、といった与信審査はあります。

 

 先ほど記載した通り、このセーフティネット保証は「信用保証協会付融資」といった枠組みになります。

 

信用保証協会とは?

「信用保証協会法」に基づく公的機関であり、事業経営に取組んでいる中小企業が金融機関から事業資金の融資を受けるとき、あるいは資本市場からの事業資金調達を目的として私募債を発行するとき、保証人となって借入れを容易にし、企業の育成を金融の側面から支援する機関です。この信用保証協会が保証してくれる保証制度融資があり、保証制度を利用することで以下のメリットがあります。

 

1.無担保での利用が可能

中小企業が金融機関から資金調達をする場合、担保提供を求められる場合があります。担保として最も一般的なのが不動産です。所有不動産を担保として金融機関に差入れ、その担保価格に見合った金額の融資をうけるといったことはよくあります。

しかし中には創業間もない企業や自社の所有不動産を有していない企業も少なくありません。その場合には保証協会が担保の代わりを果たし金融機関が融資に前向きに取り組みやすいような働きが期待できます。(万一、借入金の返済ができなくなった場合には、保証協会が借主に代わって金融機関へ返済します。このことを代位弁済といいます。代位弁済後は、協会に借入金を返済します)

 

2.短期から長期まで、ニーズに応じた資金調達が可能
1年未満の短期運転資金から、最長20年の設備資金などご希望に応じて選択できます。最近では代表者の連帯保証人を不要とする経営者保証ガイドラインに沿った取り組みや、事業承継に関する制度などもあります。

 

3.さまざまな融資制度のご利用が可能
協会独自の制度だけでなく、東京都・区市町の「制度融資」も利用できます。保証協会に支払う保証料を一部負担してくれたりなどよりお得に活用できる制度融資も多くあります。

 

しかし「いくらでも保証してくれるのか?」というと、青天井に保証ができるわけではありません。1企業に対する保証の限度額は合計で2億8千万円(普通保証2億円、無担保保証8千万円)と原則が定められており、この範囲を上限とし各企業の財務面や事業面を総合的に審査していきます。

東京信用保証協会HP↓

cgc-tokyo.or.jp

 

 

そんな保証協会を活用する、セーフティネット保証には1号から8号まであります。

1号:連鎖倒産防止 (令和2年2月20日更新)
2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限 (平成31年1月4日更新)
3号:突発的災害(事故等)
4号:突発的災害(自然災害等) (令和2年3月3日更新)
5号:業況の悪化している業種(全国的) (令和元年12月20日更新)
6号:取引金融機関の破綻
7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整 (令和元年12月26日更新)
8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡

 

今回の新型コロナウイルスの影響で指定されたのが、4号と5号です。

それぞれ申請要件などが異なってきます。

中小企業庁HP↓

 

www.chusho.meti.go.jp

 

4号の申請要件

  • 申請者が、下記の指定を受けた地域において1年間以上継続して事業を行っていること。
  • 災害等の発生に起因して、その事業に係る当該災害等の影響を受けた後、原則として最近1か月間の売上高又は販売数量(建設業にあっては、完成工事高又は受注残高。以下「売上高等」という。)が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること。

 

5号の申請要件

  • 指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者
  • 指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

5号についての詳細はここにあります。

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2014/140303gaiyou.pdf

現時点での指定業種です

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200303002/20200303002-2.pdf

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200303002/20200303002-3.pdf

 

 

手続きの流れ

このセーフティネット保証4号および5号は市区町村の認定を受けなければなりません。

  1. まず所在地の市区町村に認定申請を行います。(各市区町村によって書類や認定に要する時間が異なりますので、詳細は所在地の市役所等にお問い合わせ頂くのが確実です。)
  2. 希望する金融機関または最寄りの信用保証協会へ認定書を提出し、保証申し込みをします。

各金融機関にはセーフティネット保証のノウハウがあるため、事前にお付き合いのある金融機関に相談しておくと全体の流れがスムーズにいくかもしれません。

 

まだまだ影響が本格化してくるのはこれからかもしれません。

事前に国の支援策を選択肢に入れておくことで、経営のかじ取りの参考になれば幸いです。

今後も中小企業経営のヒントになるようなことを発信していけたらと思います。

 

新型コロナウイルス感染症の資金繰り支援まとめ

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世界各国で新型のコロナウイルスが広がっており、日本でも社会活動に影響が出てきています。

そんな中で政府は日本の産業を支える中小企業に対し支援策を打ち出しました。

 

大きな柱は3つです。

  1. 徹底的な資金繰り支援
  2. サプライチェーン・観光業対策
  3. 経営環境の整備

ここではその中でも、1の「徹底的な資金繰り支援」について深堀りして記載していきます。

資金繰り支援策には、さらに主に4つの具体策が打ち出されています。

 

セーフティネット保証4号・5号

セーフティネット保証とは、中小企業信用保険法にて定められている制度です。1号から7号まであり、様々な事象に対応する保証制度となっています。ひと言で表すと「特別な融資制度」というイメージです。

信用保証協会という公益法人と連携して、金融機関が融資を行います。このセーフティネット保証は主に"新規に資金調達を検討する場合"に利用が可能となります。

 

今回のコロナウイルスでは、セーフティネット4号と5号が認定されました。

4号:突発的災害(自然災害等)
自治体からの要請に基づき、別枠(最大2.8億円)で100%保証
 
5号:業況の悪化している業種(全国的)

重大な影響が生じている業種に、別枠(最大2.8億円)で80%保証

 

といった定義がなされています。

それぞれに定義されいている原因(今回であれば新型コロナウイルス)により事業に影響が出ている企業や個人事業主が対象となります。

融資金額の最大2.8億円というのは、信用保証協会へ担保提供をしている、またはこれから担保提供をするというのが前提です。無担保での利用は原則最大8,000万円です。

セーフティネットを利用する場合には、最初に市区町村での認定証が必要となります。認定証の書式は各自治体で異なるようなので、自社の市区町村のHP等をご参考にしてみてください。

 

セーフティネット保証の詳細は中小企業庁のHPを参考にしてください。↓

 

www.chusho.meti.go.jp

 

セーフティネット貸付(要件緩和)

売上高の減少等の程度にかかわらず、今後の影響が見込まれる場合も含めて融資を受けることが可能です。

これも新規調達が主な目的の場合に利用できます。 

 

③衛生環境激変対策特別貸付

一時的な業況悪化等となった旅館業等営業者に、通常と別枠で特別貸付をします。

 

④金融機関等への配慮要請

事業者からの返済緩和要望等への柔軟な対応を要請します。

こちらは新規に資金を調達すという今までの支援策とは異なり、返済緩和(リスケジュール)を金融機関側が受け入れやすくなるといった内容です。

新規に調達するのも方法のひとつ。返済金額の減額をするのも資金調達のひとつの方法であると私は考えています。

 

②、③については、100%日本政府出資の金融機関である日本政策金融公庫が対応しているため、詳細はHPをご覧ください。

 

www.jfc.go.jp

 

①のセーフティネット保証、④の返済緩和については現在お取引のある金融機関にて相談が可能です。

②、③は日本政策金融公庫のみでの対応となります。

 

最初にも書きましたが、セーフティネットは特別な事業が発生したときに利用できる融資制度です。項目番号①のセーフティネット保証については、市区町村の認定証を取得するなど、通常の融資審査よりも手間がかかったり時間を要することもあるかもしれません。

しかしこのセーフティネットが制定されるという背景を考えると、国の「この危機を乗り越える」といった姿勢も見えてきます。そのため各種機関(市・保証協会・公庫・金融機関等)は通常に比べ審査にはスピード感をもって取り組むだろうと考えられます。そのため”多少の書類の多さ”といった煩雑さと”審査スピード”などを勘案すると、該当要件を満たすのであればセーフティネットを利用してみるのもいいのではないかと思います。特に項目番号①のセーフティネット保証については、市区町村の認定証を取得することで、保証協会の一般保証とは別に審査を受けることができます。(いわゆる別枠扱い)

また今回のセーフティネットの優位点の一つは「融資期間を長く設定できる」ことです。

通常金融機関が運転資金を協力する場合は、5年や長くても7年といったケースが多いですが、今回の制度では運転資金でも10年で調達できたりと、返済期間を長く設定することが可能です。返済期間を長く組むメリットは毎月の支払金額が少なくなり、その分資金繰りには優位に働きます。半面、期間が長いと総支払利息は多くなってしまいますので、自社の返済余力や今後の資金繰りを検討したうえで期間は設定していくのが良いでしょう。

 

 

まだまだ影響が計り知れない今回のコロナショック。世界経済にも影を落としつつあります。この危機を乗り越えるためにも、国の支援策として打ち出された支援策を活用してみてはいかがでしょうか。

 

次回は、多くの会社が利用できるセーフティネット保証について詳細に書いていきたいと考えています。