まぐ太の金融と経営の扉

金融や経営に関することを書いていきます

『財務3表一体理解法』を読みました。 感想と活かせそうなポイント!

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最近ニュース見ていると、企業決算のニュースが特に目につきます。「○○会社は増収増益見通し!」「○○会社 300人の人員削減」など。企業決算はインターネットでも簡単に見れますし、最近では個人の投資なども増えてきました。それに伴って企業決算を見る機会も増えてきたのではないでしょうか。

今や「会計」とは身近な存在。経理部門でなくてもビジネスパーソンは決算書を見たり財務分析を行ったりする必要もあるかと思います。実際私も決算書を見たりする機会があり、「もっと財務に詳しくなりたい!」「もっと数字に強くなりたい!」と思うことが多々あります。

今回は私が入社3年目くらいの時に会社の研修で紹介された「財務3表一体理解法」を読んでみましたので、ここで皆様にもご案内できたらと思います。

この本を題材にした社内研修で私自身、具体的に頭の中に入ってきたことを強烈に覚えています。財務や会計に対する苦手意識を克服することができた一冊です。

 

なぜ読もうと思ったのか

  1. 財務がわかるビジネスパーソンになりたい
  2. 数字に強くなりたい
  3. 同僚や先輩と差をつけたい

先日入社当初の研修で「財務や会計には強いほうがいい」と誰かに言われたのを漠然と思い出しました。もともと企業財務については興味があり、その時の研修で今回この本を読んでみようと思いました。自分の中で一つ核となる強みを身に着けることで、自分に自信を持ったり、まわりと差別化を図っていきたいと思ったのが、この本を手に取ったきっかけです。

 

 

この本を一言で表すと

「5つのつながりを意識しろ」

財務諸表には「基本財務3表」(損益計算書貸借対照表キャッシュフロー計算書)があります。この基本財務3表の5つのつながりを捉えることで会計の全体像と仕組みがわかりやすく入ってきます。

 

 

『財務3表一体理解法』ポイント3つ

  1. 頭と手を動かせ
  2. 個別のケーススタディで学べ
  3. コラムを読め

 

頭と手を動かせ

第2章では実際に読者が会社を設立したと仮定し、商流の流れに沿って話が進みます。その際に会計上起こるイベントが財務諸表にどのような影響を与えるのか、実際に書き込みながら進みます。そうすることでより当事者意識を持つことができ、すっと頭に入ってきます。

 

1.「5つのつながり」を意識する

財務諸表を読むには、各資料の「つながり」を意識することが大切です。以下そのつながりのポイント。

A.損益計算書(以下PL)の当期純利益は、貸借対照表(以下BS)の純資産の部の繰越利益剰余金が一致する

B.BSの右側合計と左側合計が一致する

C.直接法キャッシュフロー計算書(以下CS)の一番下の「現金の残高」とBSの「現金」は一致する

D.間接法CSの一番上とPLの税引前当期純利益と一致する

 E.間接法CSの営業キャッシュフロー(以下CF)と直接法CSの営業CFは一致する

 

2.手を動かす

第2章では読者が設立した会社の取引毎に一つ一つ財務諸表を作っていきます。巻末に空欄の財務諸表があり書きながら進めていきます。少し面倒にも感じるかもしれませんが、書きながら進めていく方が理解度も良くなるのでお勧めです!

 

 

個別のケースステディで学べ

第3章では会計基準が大きく変わった2000年~2005年後の新し会計基準について詳しく説明があります。内容としては「退職給付会計」「時価会計」「税効果会計」「減損会計」「自己株式の取得」です。これらについては第2章で自らが設立した会社の商流の流れを継続して展開されるため理解しやすいです。

第4章では連結会計国際会計基準IFRS)、純資産についても説明が個別のケーススタディで学べます。

 

1.税効果会計とは?

 財務諸表は会計の会計の原則に従い作られますが、税金は税法に従って計算されます。会計基準と税法の基準は異なるのです。

会計:収益-費用=利益

税法:益金-損金=課税所得

この費用損金は似ていますが、認識の範囲やタイミングが異なるようです。これにより税金の計算と会計が相違することがあります。そこで税法による実際の税額表記を残したまま、会計と整合性がとれた税額も同時に表記したのが税効果会計です。会計ではPLの法人税等の下に「法人税等調整額」という項目を設け、BSには「繰延税金資産」を設けます。税効果会計には現金を伴う動きが発生しないためCSに動きはありません。

 

2.IFRSって何が違うの?

IFRSとは”イファース”、”アイフォース”と呼ばれ国際会計基準国際財務報告基準のことです。会計の専門家でない人が財務諸表を理解・利用するにあたり、国際会計基準においても本書で説明されている会計の全体像と基本的な仕組みに大きな差はありません。しかしいくつか異なる点もあるため以下に挙げていきます。

貸借対照表:個別決算では「退職給付に係る調整累計額」の扱いが異なります。連結では大差ありません。

損益計算書:日本の会計基準には「その他包括利益計算書」部分がありません。連結では大差ありません。

包括利益とは資本取引を除く純資産の部の変動要因全てのことを指します。国際会計基準包括利益を重視するのは、会社の事業利益だけでなく会社の真の価値を評価していこうという考え方によるものなのです。

 

3.純資産の部の”準備金”って何?

BSの純資産の部には「株主資本」「その他の包括利益累計額」「新株予約権」「非支配株主持分」に分けられます。ここではその中でも特に「株主資本」の資本準備金利益準備金の”準備金”について見ていきます。

株主資本は「資本金」「準備金」「その他剰余金」に大きく分けることができます。この中で株主資本を理解するための大きな鍵となるのが、「資本準備金」と「利益準備金」の2つの”準備金”です。

これらは法律で積み立てることが求められています。株主から注入される資本と、会社が稼ぎ出した留保利益は明確に区分され、資本の中からの積み立てが資本準備金で、留保利益の中の積み立てが利益準備金です。

資本準備金

債権者側から見る資本金と株主側からみる資本金は意味合いが違ってきます。債権者は資本金を見てその会社が債権者を保護する余裕がどれくらいあるのかを見るのに対し、株主は出資額に対し資本金に算入する部分が少ないほど払い戻しや配当に対する制限が少なくなります。そのような利害関係の狭間で生まれたのが準備金です。会社法では出仕額の2分の1を超えない額を資本準備金として計上できます。準備金は将来の欠損に備えるために準備しているものという考えになります。

利益準備金

資本準備金に対し利益準備金には債権者の保護という明確な目的があります。会社法では配当する場合に配当額の10分の1を利益準備金として積み立てなければなりません(例外あり)。会社が稼ぎ出した留保利益は本来配当可能であるべきですが、この留保利益の一部を利益準備金として配当できないものとし、株主資本の維持あるいは減少を防ぎ、債権者の保護を図っているのです。

 

 

コラムを読め

『財務3表一体理解法』には11のコラムがあります。財務諸表を一体でりかいするという本命の目的のほかに、このコラムでは「事業主目線」のアドバイスがちりばめられているように感じます。特に経営層にいる方や個人で事業を営んでいる人たちには、より参考となるものもあるかもしれません。

 

1.経営感覚を高めるPLの見方

1日3万円の研修を受講したとします。この3万円の受講料を賄うためには会社はいったいいくらの売上を上げる必要があるでしょうか。仮に荒利率が10%だとすると30万円の売上が必要です。つまりこの研修費用は30万円の売上に匹敵するのです。このようにPLを下からの見ていく癖をつけていくとコスト感覚・経営感覚が磨かれます。

 

2.「人間」は財務諸表には出てこない

完成度の高い財務3表にも表れないものがあります。それは「人間」と「知恵」の価値です。人間の価値に関して財務3表に表れるのは給料や退職金の金額だけです。人間の価値はそれだけで決まるものではありません。

また特許権などの知的財産も財務3表にはでてきません。BSの無形固定資産の項目に特許の取得費用は計上されますが、本当の価値とは言えません。

この見方をすると企業とは「製造ノウハウ」や「営業ノウハウ」などがたくさん詰まっていますが財務諸表上には出てきません。将来の成長を診断するうえで欠かせない判断材料である社員の価値や知的財産の価値は財務諸表では計れないのです。

 

3.勘定合って銭足らず

「利益」 と「現金」は別物です。PL上で利益計上しているから必ず社内に現金があるとは限りません。

PLはその期の正しい営業活動を説明するために、売掛金や買掛金のように現金の動きのない売上高や仕入高が計上されるからです。

またPLには企業がお金を集めてくる借入金や資本金などといった現金の動きは一切現れません。これらによりPLの利益は現金とは一切関係のない数字になっているのです

 

感想

この本を読み進めてくなかで、財務3表のつながりの理解が深まったような気がします。個別の取引について考えてみると、その後の財務3表の影響を想定して考えられるようになった気がします。

この財務3表シリーズには2冊あるみたいなのでそちらも読んでみようと思います。

金融機関職員の入社当初の方や、財務に苦手意識のある中小企業経営層や事業主の方にもお勧めの一冊です!

 

内容

簿記を勉強しなくても会計がわかる!
シリーズ累計60万部突破の大ヒット作が内容を大幅に増強して帰ってきた。
刊行後約10年の会計実務の変化に対応したほか、3表を見開き2ページにおさめるなどビジュアル力も大アップ。
初読者も既読者も必読!

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著者紹介

國貞/克則
1961年岡山県生まれ。東北大学機械工学科卒業後、神戸製鋼所入社。海外プラント建設事業部、人事部、鉄鋼海外事業企画部、建設機械事業部などで業務に従事。1996年米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータコーポレーションを設立。日経ビジネススクールなどで公開セミナーやeラーニングの講座を担当している

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